【球団トップに聞く】ヤクルト・衣笠社長 「勝利」に勝るファンサービスなし

[ 2017年1月27日 10:30 ]

球団社長に聞く!ヤクルト・衣笠剛球団社長(下)

持ち前のリーダーシップで改革を行う衣笠球団社長兼オーナー代行
Photo By スポニチ

 ヤクルトの衣笠球団社長は就任後、施設改善に乗り出した。寮と同じ敷地内に室内練習場を新築。戸田グラウンドの外野フェンスも改修した。現在は電光掲示板を設置中で、イースタン・リーグの開幕までに完成予定。4年間で約11億円を投資し、環境を整えた。

 「名前が表示されれば、選手のモチベーションにつながる。電光掲示板なら球速も分かる。興行、野球のことが分からない中、施設改善に着手したことは良かった」

 もう一つ、重きを置いたのは「ファンの声」だった。現職に就くまで計16年間、広報畑に籍があった。お客様相談センターの電話も受けた。そこで年に何件もあったのが「ヤクルトのグッズが欲しい。遠くてもいいですが、どこで売っていますか?」という問い合わせだ。

 当時、グッズの常設店がなかった。購入できるのは試合開催時の球場内のみ。社長就任3年目の13年、外苑前駅から球場へと続く、スタジアム通りに初めて常設店を出店。つば九郎ショップも設けた。「一挙に2店はリスクも感じたが、おかげさまでうまくいった」。

 約2億だった総売り上げは、一昨年の優勝も追い風に、昨年にはついに10億円を超えた。手本は「カープ女子」で女性ファンも急増させた広島だ。以前から「松田オーナーには、懇意にさせていただいています」。球団職員を年に数回、視察目的でマツダスタジアムに派遣。意見交換や助言をもらう。

 観客動員も右肩上がり。「この流れを途絶えさせてはいけない」。今季も始球式や試合後のグラウンドを使用したものなど、さまざまなイベントを企画する。そして、ここに一番の力を込めた。

 「最も大切なのは、チームが勝率5割以上で勝っていくこと。勝ってもらうために、フロントは球場に来てくださるお客さまを増やし、選手のモチベーションを上げたい。そうするとまた勝つ。そしてお客さまも増えていく」

 投手陣の再建が課題のこのオフは、ドラフトと外国人で8投手を補強。「去年は一昨年に優勝して、かぶとの緒を締め忘れた部分があったのだと思う。投手陣には頑張ってもらいたい」。就任7年目で初めて元日の明治神宮を参拝した。リーグ優勝奪回、その先の日本一再挑戦への熱い思いが伝わる。 (川手 達矢)

 ◆衣笠 剛(きぬがさ・つよし)1949年(昭24)1月21日、愛媛県生まれの68歳。日大卒業後、71年にヤクルト本社に入社し、営業部門などを担当。専務取締役を経て、11年から現職に就いた。本社在籍中には日本生まれの生涯スポーツである「バウンドテニス」の普及に尽力。現在も協会会長を務めている。

続きを表示

2017年1月27日のニュース