ソフトB工藤監督 野球少年たちをとりこにする魔法のような指導法

[ 2016年12月17日 11:00 ]

バットを使い肩肘に負担のかからない投球フォームを指導するソフトバンクの工藤公康監督
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 オフシーズンはとにかく、少年野球教室の取材が多い。打撃練習、キャッチボール。2時間程度の間に教えられることは基本的なことに限られる。だから12月11日、都内の室内練習場でソフトバンク・工藤公康監督が行った野球教室には思わず、興味をそそられた。

 「子どもたちは教えるとすぐできたり、少しのきっかけでうまくなる。だからいいフォームで投げてほしいし、そうすればケガも少なくなる。好きな野球をできるだけ長く続けてほしいから」

 使ったのはおもちゃのバットと発泡スチロール製のボールだ。投げて打つわけではない。まずはバット。利き手に持ち、頭の後ろから振り下ろすと投球動作になった。軽いバットを使ったのは未発達の子どもたちの肩肘に負担がかからない工夫だ。横降りになる子には自らバットを持ち「これをたたいてみろ」と目の前に差し出した。たたこうとすると自然に縦振りに近づいていくのだ。

 次はボールを使う。素材が発泡スチロールだから軽く空気抵抗を受けやすい。バットで感覚をつかんだフォームのテストだ。正しく投げればボールは離陸する航空機のようにまっすぐ進んだあと上昇する。左右に大きく曲がったり、地面にたたきつけたりと最初はうまくいかなかったが、数回もこなせば成功できる子どもが増えていった。

 野球教室の終盤には、参加した現役プロ野球選手との対戦できるイベントがあった。だが、それには目もくれず、多くの少年、少女が投げることをやめようとしない。「おいおい、始まっているぞ。みんな見なくていいの?」。工藤監督は困ったように笑ったが、熱中させながら故障しないフォームを身につけさせるのは魔法のように見えた。

 聞けばこの野球教室は23回目を迎えたという。長年の積み重ねにより、よりよい指導方法を追求した結果、成熟したものへ進んでいるのだと思う。(記者コラム・福浦 健太郎)

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2016年12月17日のニュース