巨人の大型補強に感じる「本気度」 何としても避けたい3年連続V逸

[ 2016年11月27日 09:40 ]

日本ハムから移籍した吉川光(左)は高橋監督からユニホームを着せてもらう
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 歴史は繰り返す。2年連続2位に終わった巨人が今オフ、積極的な補強に動いている。FAで先発のDeNA・山口、中継ぎのソフトバンク・森福の獲得を目指しており、さらに2対2の交換トレードで日本ハムから左腕の吉川光を獲得。まずは今季、防御率3・45でリーグ3位だった投手陣の充実を図る。さらなる補強も予想され、3年ぶりのV奪回に向け、チーム力を強化している。

 4位に低迷していた今年7月7日だった。前球団最高顧問の渡辺恒雄読売新聞グループ本社代表取締役主筆は「由伸の責任じゃないからな。フロントだよ。補強していないんだから。こんな補強せずに今の陣容で勝てったって無理だよ」と指摘し、就任1年目の高橋監督を擁護した。その結果、25年ぶりにリーグ優勝した広島に17・5ゲームの大差をつけられての2年連続V逸に終わった。

 渡辺主筆はオーナー時代など勝てない時期が続いたとき、必ず大型補強に動いている。3年連続でリーグ優勝を逃した99年オフ、ダイエー(現ソフトバンク)の工藤と広島の江藤をFAで獲得。翌00年、長嶋監督はダイエー・王監督との「ON対決」を制し、6年ぶりの日本一に輝いた。

 再び補強が実を結んだのは、4年連続で優勝を逃した06年オフだ。日本ハムの小笠原をFAで獲得し、翌07年にリーグ優勝。同年に始まったクライマックスシリーズで中日に敗れると、そのオフにさらなる大型補強を敢行。ヤクルトから4番のラミレスとエースのグライシンガー、さらに横浜(現DeNA)の守護神・クルーンを獲得し、09年までのリーグ3連覇につなげた。3~4年勝てなければ、補強で戦力を上げる。それが、勝つための「近道」だった。

 巨人は近年、若手の育成に力を注いでいるが、レギュラーを奪うような若手選手はほとんど出てきていない。そもそも、1位指名が入札抽選となる現ドラフト制度では、アマチュアの有望選手を確実に獲ることはできない。今年もアマトップクラスの即戦力投手である創価大・田中を1位、桜美林・佐々木を外れ1位でいずれも5球団による抽選で外している。現監督の高橋由、阿部、二岡、元エースの上原(レッドソックスからFA)ら、すぐに主力になった選手はいずれも逆指名で獲得してきた。当時、巨人担当で新人時代の彼らを間近で見てきたが、プロ1年目からレギュラーを獲れる実力があった。

 新人選手を獲得するドラフトで苦しみ、さらに資金的にも「上には上」がいる。かつて地上波放送で得ていた莫大な収入はなくなったことも影響し、現在は世界的な富豪でもある孫正義オーナー率いるソフトバンクにかなわないのが、実状である。12球団一の資金力を誇ったひと昔前とは違い、補強費にはある程度の限度があるだろうが、3年連続V逸は避けなければならない。久々の大型補強に、巨人の「本気度」が感じられる。(野球コラム・飯塚 荒太)

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