やはり神ってた? 広島V奪回の立役者・鈴木誠也

[ 2016年11月23日 11:00 ]

広島・鈴木誠也
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 【宮入徹の記録の風景】打席でのスキのない構えには風格すら漂う。二松学舎大付属高出、入団4年目の鈴木誠也外野手(22)は今季ブレーク。打率・335はリーグ2位、29本塁打、95打点はいずれも同5位とチーム25年ぶりの優勝に貢献した。中でも本塁打は昨年の5本から一気に24本も増加。広島で22歳シーズンまでに20本塁打以上を記録したのは68年衣笠祥雄が21歳シーズンで21本、93年前田智徳が22歳シーズンで27本と記録したのに次ぎチーム3人目の快挙になった。

 本数の多さだけではない。鈴木の場合、いわゆる空砲が極端に少なかった。1試合2本塁打が3度あったが、鈴木が本塁打した試合に広島は23勝3敗。勝率は・885に達した。広島の打者でシーズン25本塁打以上をマークしチーム勝率が鈴木より高かったのは84年山本浩二が33本塁打で26勝3敗2分けの・897となったのがあるだけ。勝利に直結する一発が目立った。

 鈴木を評して「神ってる」は流行語にもなったが、これに関して興味深い数字を見つけた。「打撃の神様」といえば巨人の川上哲治を指すことは誰もが知っている。同氏は50年に今季の鈴木と同じ自己最多の29本塁打をマークした。その年、自身が本塁打した試合に巨人は21勝3敗の勝率・875。鈴木はわずかながら勝率で打撃の神様を上回っており、「神ってる」は語法的にも適切に思える。

 チーム貢献度といえば巨人のON砲も気になるところ。本塁打時の通算勝率は長嶋茂雄が・720、王貞治が・707で長嶋に軍配が上がる。単年でも25本塁打以上のシーズンでは長嶋は62年に・857、王は66年の・854が最高で長嶋には及ばなかった。もっとも王はシーズン40本以上が13度もあり、敗戦が増えるのは避けられなかったのだろう。

 パ・リーグでは「怪童」と呼ばれた西鉄の中西太を外すわけにはいかない。チームの黄金期を支え、本塁打した試合は通算166勝49敗7分けで、勝率は・772とONをしのぐ。特に3年連続日本一に輝いた56年から58年までは圧巻だ。3年間の通算勝率は59勝8敗1分けの・881。本拠地の平和台球場に限れば、27勝3敗1分けの・900とチームにとって絶大な存在であったことが分かる。

 話はそれるが70年代後半、筆者が学生の頃に中西氏は阪神の打撃コーチを務めていた。神宮球場で行われたヤクルト戦で試合前に同氏が外野ノックをすると、打球はグングン伸びて左翼手の頭上を越えそのままスタンドへ。怪童の全盛時を懐かしむファンが大きな拍手を送っていた。(専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、1回目の91年から26回連続で資料説明役として出席。

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