熊本復興を後押し「打撃の神様」川上哲治氏の特別展始まる

[ 2016年11月16日 10:45 ]

川上氏が着用したグラウンドコートと、V9戦士のサイン入りペナント

 あれは社会科の地図帳だったか。鉄道路線がくるりとループしているのに興味を持って、熊本の人吉という地名を覚えた。その人吉がプロ野球に偉大な足跡を残した川上哲治氏を生んだと知ったのは、野球担当記者になって何年かたってからだ。

 史上初の通算2000安打を達成した「打撃の神様」にして、巨人を栄光のV9に導いた大監督。回り道などないその野球人生に触れる場を、今回得ることができた。野球殿堂博物館(東京都文京区)で15日に始まった「川上哲治特別展」。13年10月に93歳で亡くなった後に自宅に残されていた資料31点が長男の川上貴光氏(よしてる=70)から寄贈され、これまでの所蔵品と合わせた65点が展示された。ゆかりの品の多くは人吉市の川上哲治記念球場に収められており、殿堂博物館で川上氏の着用したユニホームが展示されるのは初めて。他にも生前に居室の見える場所に常にあったという、2000安打記念絵皿などが並んだ。

 広間の一角には募金箱が置かれた。この特別展は「熊本応援企画」として来年1月15日まで催され、熊本地震被災者支援の義援金を募る。オープニングセレモニーに出席した貴光氏は、巨人の永久欠番となっている背番号16のユニホームを前に「熊本を応援するということで、もし父が生きていれば、よくやったと言ってくれるだろうと思います」と微笑んだ。

 式典には同じ人吉出身の巨人V9戦士・末次利光氏(74)も出席。「物心ついた時には“神様”として存在されていた。野球界の神様であり、最高の監督。そして私にとっては優しい親父さんだった」と川上氏を回想した。10月には、地震で大きな被害を受けた熊本城を目の当たりにしたという。「復旧はするだろうが、復興には相当な時間がかかる」。巨人が開くアカデミーで熊本の少年球児の指導にもあたっており、郷土にエールを送る企画展の盛況を祈ってやまなかった。

 10日発表の来季セ・リーグ日程に、うれしい2文字があった。「熊本」だ。4月18日の巨人主催試合(対ヤクルト)が、今年4月には地震の影響で試合を中止せざるを得なかった藤崎台県営野球場で開催される。天国の川上氏は、これにもきっと目尻を下げていることだろう。(記者コラム・和田 裕司)

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