もう二刀流は卒業…ケガに泣いた“料理人ルーキー”再出発へもがく日々

[ 2016年11月14日 12:12 ]

オリックスの角屋龍太投手

 1年ぶりの再会に笑顔はなかった。昨秋のドラフト連載「異彩の男たち」で取材したドラフト8位のオリックス角屋龍太投手(26)。10月からオリックス担当になり改めて、あいさつした時のこと。柔和だった表情は険しかった。今オフ、自由契約になっていた。

 所属していたジェイプロジェクト(名古屋市)は名古屋を中心に居酒屋など約130店舗を展開する会社で、選手全員が同社の飲食店に勤務。角屋はキッチン担当で昼間はグラウンドで白球を握り、夜は包丁に持ち替え料理の腕を振るった。苦労の末つかんだプロの舞台。異色の“二刀流”右腕は苦しいルーキーイヤーを過ごした。

 「率直にすべてが物足りなかった1年でした。直球、変化球など技術面もそうだし、特に心の部分。全部が全部、反省するしかない1年でした」

 最速149キロの直球とカットボールを操る強気の投球スタイル。デビュー戦は4月5日の楽天戦、劣勢の6回から登板し2回無失点。上々のスタートを切ったかに見えたが、次戦の同9日ソフトバンク戦で1被本塁打を含む3安打3失点と炎上し同14日に出場選手登録を抹消された。這い上がる努力が裏目に出た。夏場には右背筋から左脇腹にかけての張りでドクターストップ。「投げられないほどのケガをしたことはなかったので」。再昇格はなかった。1軍では2試合で計2回1/3を投げ3失点、防御率11・57。2軍では15試合登板で0勝2敗、防御率7・79と不振を極めた。

 育成選手として再契約の可能性はある。再出発へ、もがく。ほっと神戸での秋季練習では、安達らに混じり遊撃手の位置で本格的なノックを受けることが日課だった。「最初は三塁でノックを受けて、一塁へ送球するなど、投球のための練習をしていました。長い距離を投げることで球筋を確認していたんですが、風岡コーチから“やってみたら?”と言っていただいて練習するようになりました」。スパイクを履いて捕球動作を繰り返すことで下半身を強化することが狙いだ。高知秋季キャンプには同行せず、神戸で残留練習に励む。連日のようにブルペン入りし、200球近く投げ込む日もある。棒に振った1年を取り返すためだ。

 現在は神戸市内で寮生活。食事など栄養面のサポート態勢は万全で、自ら料理する機会は減った。「寮のみんなから“手料理、振る舞ってよ”とか言われますけど、そこは絶対に断っています」。プロ入りを機に“二刀流”卒業という強い思いがある。包丁は置いた。今はプロの強打者を料理する牙を、必死に研いでいる。(オリックス担当・湯澤 涼)

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2016年11月14日のニュース