黒田 将来的な指導者に意欲「還元できるものあれば還元したい」

[ 2016年11月5日 05:30 ]

奉告会に姿を見せた黒田と新井(右)

 日本シリーズを最後に現役引退した広島・黒田博樹投手(41)が4日、同市南区のマツダスタジアムで記者会見を開き、「できすぎの野球人生。つくづくカープでよかったと思う」と総括した。現役20年間で日米通算203勝を挙げ、25年ぶりのリーグ優勝で締める大団円。今後については「野球を離れてゆっくりしたい」としたが、将来的な指導者には「還元できるものがあれば還元したい」と意欲をみせた。

 報道陣150人、テレビカメラ18台が詰めかけた会見場。黒田は、広島市民賞授与式に臨んだままのユニホーム姿で一語一語をかみしめた。周囲の熱気をよそに表情はすがすがしい。完全燃焼した達成感がにじんでいた。

 「日本一になれなかった悔しさはあるけど、自分の中では出し切った充実感がある。今年優勝できて、最高の締めくくりができたかなと思う」

 10月25日、日本シリーズ第3戦(札幌ドーム)が記憶に鮮烈だ。右ふくらはぎがつり、6回途中1失点で無念の降板。日ハム・大谷を左飛に斬った1球が現役最後となり「(直後に降板した)悔しさと、最後に投げた球が彼だったといううれしい気持ちがある。いい思い出になる」と語った。

 一時代の終焉(しゅうえん)を告げる象徴的なシーン。会見では、大谷のメジャー挑戦についても質問が飛び、逸材の未来像を予想する一幕も。「投手と野手、どちらを選択するかわからないが、かなり高い確率で成功すると思う。チャレンジするなら、いちファンとして楽しみにしたい」と明言した。

 背番号「15」の永久欠番化にも初めて触れた。広島では山本浩二、衣笠祥雄に次ぐ栄誉。「最初に聞いた時は鳥肌が立った。素晴らしい先輩方がいる中で、自分の背番号がそうなるのは恐縮。ボク個人というより、皆さんの背番号だと思う」。素直な思いだった。

 盟友・新井への質問に「この後、FA宣言の会見をすると言っていた。もし、そうならボクもそちら(取材)側で聞きたい」と返すと、場内は爆笑。泣き笑いを共有してきた間柄だからこその、最後のいじり。涙と無縁の引退会見だった。

 「一番は解放感。夜に眠れなくても“別にいいんだ”と思えるし、朝起きて体が痛くても“別にいいんだ”と思える。その“別にいいんだ”が自分の中で気持ちよくて」

 昨今の表情の違いを指摘されると、そう言って白い歯をみせた41歳。気になるのは今後だ。「取りあえず野球を離れてゆっくりしたい」。ただ、将来的な指導者への意欲を問われると、苦笑し、冗談めかす中で意味深な言葉が口をついた。

 「引退後の1年間、何もせずにいたら、自分がどんな気持ちになるのか想像できない。野球が好きだったと分かれば“もう1回投げます”と言うかもしれない。米国と日本で野球をさせてもらった。還元できることがあれば、還元したい」

 引き際の美学を貫き、さん然と輝いた黒田の野球人生。第2幕が開く日をファンは待っている。 (江尾 卓也)

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2016年11月5日のニュース