涙なし41歳 黒田 現役に別れ「試合に負けたことの方が大きい」

[ 2016年10月30日 06:05 ]

SMBC日本シリーズ2016第6戦 ( 2016年10月29日    マツダ )

<広・日>日本一ならず…。ファンにあいさつする新井(右)と黒田
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 日本ハムのVセレモニーを見届けた広島・黒田は帽子を脱ぎ、スタンドを真っ赤に染めた大観衆に向かってあいさつした。涙はない。「お疲れさま」「ありがとう」。別れを惜しむ絶叫がこだまする。その表情は、戦いを終えたすがすがしさに満ちていた。

 「実感がない。自分がやめるということより、試合に負けたことの方が大きい。日本一を目指して準備していたので…」

 逆転日本一を懸けた、世紀の対決は幻に終わった。去りゆくレジェンドと二刀流スターの投げ合い。畝投手コーチは「中4日なので、行けるところまで行ってもらう」と黒田の第7戦先発を示唆し、栗山監督は大谷の先発を明言していた。右腕はそこに触れず、次代をけん引する22歳の才能を改めて絶賛した。

「次元が違う。投手と打者、両方が優れているのはあり得ないこと。どんな選手になるのか、一ファンとして楽しみ」

 引退表明前も、その後も、黒田はあくまで黒田だった。慢性的な痛みを抱える右肩に、消炎剤注射をこっそり打ってのCS突入。先発した今シリーズ第3戦では、右ふくらはぎがつるアクシデントで6回途中降板を強いられた。直後のベンチ裏。患部の治療と並行し、次戦に備えて右肩をアイシングする41歳がいた。そこに共通するのはチームへの強い責任感だ。

 引退後を問われると、「ずっと野球をやってきたので、離れた生活は想像できない。体のことを考えずにオフを過ごすのは初めて。いろんなことを楽しみたい」と答え、戦友たちにエールを送ることも忘れなかった。

 「来年は連覇して、日本一になってほしい。陰ながら応援しています」

 背番号「15」は引退する。不遇の時代を耐え、海の向こうで自分を磨き、復帰したカープでリーグ優勝。日本一の座にはあと一歩届かなかったとはいえ、こんな大団円は過去に例を見ない。間違いなく言える。若ゴイたちに伝授した勇者のDNAが、再び到来するであろう広島黄金期の土台を築いた、と。黒田は球史に残る幸せ者だった、と。(江尾 卓也)

 ▼熊崎コミッショナー チームやファンへの愛や、男気あふれるプレーに心からの敬意を表します。近い将来、どのような形であれ、日本球界に再び力を貸してほしいと願っています。

 ≪ブランク25年超 敗退は初の屈辱≫広島は2勝4敗で敗退。91年以来25年ぶりのシリーズだったが過去25年以上のブランクを経て出場したチームは98年横浜(38年ぶり=V)、99年ダイエー(26年ぶり=V)、05年ロッテ(31年ぶり=V)、06年日本ハム(25年ぶり=V)と全て優勝。敗退は広島が初めて。

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