【野村謙二郎の大分析 機動力】2度の仕掛けにハマった大谷 捕手返球スルー

[ 2016年10月23日 08:15 ]

SMBC日本シリーズ2016第1戦 ( 2016年10月22日    マツダ )

<広・日>2回1死一、三塁、
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 本拠地マツダスタジアムで開幕した日本シリーズ第1戦を制した広島にとって、大きかったのは先制点だった。それも日本ハムが意識する機動力で奪えた点に意味がある、と野村謙二郎氏(本紙評論家)は分析した。剛腕・大谷攻略に対し、シンプルに低め速球を狙った打線は「大谷用」に起用した松山、エルドレッドの2発が期待に応えた。(構成・内田 雅也)

 レギュラーシーズンで圧倒的な強さを誇った本拠地で開幕を迎えた広島としては、その優位さを生かす意味でも何としても先制点が欲しかった。大舞台の緊張もある中、両チームとも普段通りの姿勢で試合に入れたのではないか。相撲で言えば、がっぷり四つの立ち合い。ここで広島が仕掛け、試合を動かした。

 恐らく日本ハムは相当に広島の機動力を意識していた。2回、先頭の鈴木が四球。1死後、安部の打席で大谷は3球、一塁に速いターンのけん制球を放った。投球も速いクイックモーションだった。安部は右前打で1死一、三塁。打者は8番・石原。ここで初球、4球目と2度、セーフティースクイズを仕掛けた。ともにファウルとなったが、この仕掛けが相手のミスを呼んだ。2度目のスクイズがファウルの際に安部がスタートを切っていたことで、その意識はさらに高まったはずだ。

 2ボール2ストライクとなってスリーバントはない。再び一塁走者・安部がスタートを切ったが、日本ハム側にサインの連携ミスがあった。一、三塁を守る側は一塁走者が走った際、捕手がどこに投げるか。二塁直送か、二遊間のカットか、投手カットか――を1球ごとにサインで伝達する。大野は投手に返したはずが、大谷はこの送球をしゃがんでよけていた。恐らく大谷のボーンヘッドだろう。結果的に重盗となり、思わぬ形で先制点が転がり込んだ。これが野球である。あえて書けばミスを誘ったのだ。

 広島は、相手が意識していた機動力で得点できたことが今後にも生きてくる。5回の一塁走者・丸も、大谷のモーションを完全に盗んでいた(結果は打者ファウル)。広島、日本ハムはともにリーグ最多の盗塁数を誇る。だが、この日の日本ハムには機動力を使う局面がなく、広島だけが相手に意識を植え付けることができたわけだ。

 ▼日本ハム・栗山監督(2回に許した重盗について)見れば分かる。こういうことも含めて野球。三振は取っているし、そういう形になると分かってサインを出す。

 ▼日本ハム・大野 作戦上のことなので、言えません。

 ▼広島・安部(2回に鈴木との重盗を決め)あるな、と思ったので準備していた。先制点になって勢いがついた。(打っても大谷からチーム唯一の2安打で)みんなに声を掛けてもらって地に足を着けた。

 ≪先制した試合は勝率・705≫広島は今季、本拠地・マツダスタジアムで49勝20敗1分け。.710の高い勝率を誇った。また、今季143試合中、先制したのは79試合あり、55勝23敗1分け。先制した試合での勝率は.705。セ・リーグで勝率7割を超えたのは広島だけだった。

 ▽69年第4戦巨人・土井の本盗 3点を追う巨人は4回無死一、三塁から重盗を仕掛けた。一塁走者・王のスタートを見て阪急の捕手・岡村が二塁へ送球し、二塁手がカットして本塁へ返球。三塁走者の土井が本塁へ突入し、ブロックの隙間に左足を伸ばした。セーフの判定に岡村が激高。岡田球審をミットで殴打し、日本シリーズ史上初の退場処分を受けた。翌日の新聞紙上では、タッチより早く土井の足が本塁に触る決定的な写真が掲載された。

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