黒田 日米200勝より…地味な記録に生きざま

[ 2016年10月19日 10:00 ]

広島・黒田 今季限りでの現役引退表明 ( 2016年10月18日 )

引退する思いを語る黒田
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 あれはシーズン佳境の9月。本人に直接聞いたことがある。称賛され、尊敬を集め、誰もがうらやむ成功の野球人生は、どんなものか、と。「そんなんじゃないです」。広島・黒田は即座に否定、苦笑いしつつ思いを吐露した。

 「やっている方はたまらない。“頑張れ”と言われるのが、もうしんどい。言われることに体が拒否反応を示すから、余計に疲れるんです」

 引き際には独自の美学を持つ。「日本に帰ってからは一度も投球に納得したことがない」とも聞いた。覚悟はしていた。ただ、いつかは来るとわかっていても、いざ「引退」の2文字を突きつけられると、寂しさで胸の鼓動を抑えられない。

 さん然と輝く日米通算203勝。だが、自分でコントロールできない勝ち星よりも、日米通算3340回2/3に及ぶ投球回数や、同505試合の先発機会といった、地味な記録に自らの価値を見いだす。それこそが在籍チームに貢献した証。それが黒田の生きざまだ。

 41歳の今季も第一線で若手を引っ張り、リーグ優勝に導いた。会見では「引き際を間違えないために、一生懸命やってきた」と言った。球界の先人が、身も心もボロボロになって去った姿に重ね合わせると、黒田はまさにつわもの。「まだできるじゃないか」と問うたら、きっとこう言うだろう。「だから、辞めるんですよ」と――。

 最後の舞台。雄姿をまぶたに焼き付けたい。 (広島担当・江尾 卓也)

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2016年10月19日のニュース