【石井一久クロスファイア】カーショー抑え以外でも光るロバーツ監督の決断力

[ 2016年10月19日 11:40 ]

13日のナショナルズ戦の9回2死、一、二塁、最後の打者を三振に仕留め拳を振り上げるカーショー
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 短期決戦では、継投策が大きく勝敗の行方を左右する。パ・リーグのCS第5戦もそうだったが、メジャーでも、今後も語り継がれるであろう試合があった。13日に行われたナ・リーグの地区シリーズ第5戦。4―3でナショナルズを下し、シリーズ突破を決めたドジャースのデーブ・ロバーツ監督の大胆な采配だ。

 9回1死一、二塁のピンチでエースのカーショーが中1日で抑えで出てきたことが話題を呼んでいるが、一番のポイントは本来のクローザーであるジャンセンの起用だったと思う。1点差に追い上げられた7回無死一塁の場面で迷わずに投入。相手の勢いを止め、2回1/3、51球を投げた。

 メジャーは契約社会。トップクラスの守護神は原則1イニングで、長くても「4アウトまで」という条項を契約に盛り込んでいる。これがポストシーズンになると、「6アウト」まで延びるケースもある。その場合も、球団が代理人に事前に連絡を取って「5アウト、6アウトまで使っていいか?」と確認を取る。ジャンセンに関しても代理人の許可を得ていたと思うが、7回無死からの「9アウト」(結果的には7アウト)は異例だ。ロバーツは監督就任1年目。この決断力は、彼の現役時代のプレースタイルから来ているような気がする。

 彼とはドジャースでチームメートだったが、とにかくアグレッシブだった。最大の武器は足で、盗塁する際は常にヘッドスライディング。中堅の守備でも失敗を恐れずに頭から飛び込む。ロバーツを有名にしたのは、レッドソックス時代の04年リーグ優勝決定シリーズで見せた伝説の盗塁だ。

 ヤンキースに3連敗して迎えた第4戦。1点を追う9回無死一塁から代走で登場すると、相手も「絶対に走ってくる」と警戒している中で初球に二盗を決めた。そこから4連勝したチームはワールドシリーズも制して、86年ぶりの世界一に。決断に一瞬の躊躇(ちゅうちょ)も許されない場所で生きてきた選手なので、その思い切りの良さが采配にも出ている。

 日系人監督として初のワールドチャンピオンに輝けば快挙。選手として、監督として、ポストシーズンの歴史に名を残すことになるだろう。 (スポニチ本紙評論家)

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2016年10月19日のニュース