結果で周囲の批判的な声を封じた田中 来季目標は“もっと長く”

[ 2016年10月12日 10:15 ]

ヤンキースの田中(AP)
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 今季、自己最多の14勝を挙げ、ア・リーグ3位の防御率3・07をマークしたヤンキースの田中将大。相手打者だけでなく、右腕が年を追うごとに1つ1つ封じてきたものがある。それは、周囲の批判的な声だ。

 大リーグ1年目の14年7月に右肘じん帯を部分断裂。手術を回避した決断に米国内には懐疑的な論調が多かった。翌15年は打者の手元で動くツーシームを主体とする投球に切り替えたが、球速を抑えた投球に「肘をかばって球速が出ていない」との声が噴出した。球場の球速表示がたまたま出なかった時には「速球のことばかり聞かれるから消したのか」と質問されたこともあった。同年、ア・リーグ9位の25本塁打を浴びたときは「一発病」。今季も中4日の登板間隔では防御率が3・71なのに対し、中5日が2・41とのデータを持ち出して「中4日でいい投球ができない」と、名門のエースとして期待が高いからこそ、ことあるごとに批判を浴びてきた。

 今季終盤。田中がその声について胸の内を明かす機会があった。昨季は中4日が2・56、中5日が3・51と中4日の方が良かったデータを引き合いに出し、「結果で言われることだからしょうがないこと」と理解を示しつつもこう言った。「前半戦は中4日と中5日の成績が違いすぎると質問が飛んでいましたけど、抑えだしたら何も聞かれなくなった。突っつきたくなるところが1つなくなったのかなと思う。(その時)本当に思っていたのは今だけで言うなよ、と。今に見とけよ、という気持ちが強かったかもしれない」。

 昨季は懸念された被本塁打の多さについても言及。昨季の9イニングあたりの被本塁打率は1・46だったが、今季は支配的な投球を見せた1年目と同じ0・99と、1試合あたり1本以下まで激減した。「そこも聞かれなくなりましたね。できればそうなっていくんだろうと思っていましたけど」とニヤリ。「そういう投球ができたことがチームの勝利につながっていったのかな」と自己分析した。

 今では「右肘じん帯再建手術を受けるべき」という声は聞かれない。手術を回避した田中の決断は「正しかった」との結論に達したようだ。それも全ては田中が周囲の声をねじ伏せるほどの結果を残してきたから。それでも右腕は「このリーグの本当のエースのピッチングに比べるとまだ足りない。見劣りする部分がある」とさらに上を見据える。「まだ降りるイニングが早いんですよね。本当にトップの投手は100球以上投げる」。田中が目標としていた200投球回を今季クリアしたア・リーグの投手は9人で、そのうち1試合あたりの平均投球数が100球を超えたのは9人中7人。田中は1試合平均94・7球だった。「大事に使ってくれているというのはもちろんあるけど、そこも関係なしに投げていければ、そういうところに近づいていけるのかな」という。

 理想は長いイニングを投げ、その試合の勝敗を背負える投手。リーグを代表するエースを目指し、メジャー4年目の来季も試行錯誤を続けていく。(記者コラム・東尾 洋樹)

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