侍の二塁はどっち?山田を進化させる菊池とのハイレベルな争い

[ 2016年9月13日 09:40 ]

スタンドに向かってつば九郎と手を上げる山田

 6日のDeNA戦で盗塁を決め、トリプルスリーの条件を満たしたヤクルトの山田。日本プロ野球80年の歴史で史上初の2年連続の快挙だが、今季はもう一つの目標を掲げていた。「ゴールデングラブ賞を獲りたい。守備でもチームを助けたいんです」。腰痛に悩まされた6月。立っているのも辛い状況で敗色濃厚の展開でも1球に集中し、二遊間へ飛んだ打球に迷いなく飛び込んだ。「投手を助けたい」と決意は本物だった。

 14年に右打者最多の193安打、自身初のトリプルスリーを達成した15年は本塁打王と盗塁王、今年も打率・324、38本塁打、96打点と3冠王を狙える位置につけている。打力と俊足に目が行きがちだが、守備力も向上している。

 三木ヘッド兼内野守備走塁コーチは「守備への意識が昨年以上に強くなった。元々センスはある。それに加えてポジショニングや打球判断も理由づけができている」と評価する。二遊間でコンビを組む大引も「哲人の守備範囲、ハンドリング、安定した送球はトップレベル。併殺もきっちり取れる。昨年だってゴールデングラブを獲ってもおかしくないと思っていた」と話していた。

 守備も成長曲線を描く山田が獲っていない賞。高い壁で立ちはだかるのが、広島の菊池だ。ゴールデングラブ賞は記者投票。昨年の二塁は156票の菊池が受賞し、山田は次点の89票だった。今季の失策数は菊池が4に対し、山田は5。ただこの数値だけが本質ではない。菊池の守備能力は目を見張るものがある。

 驚異的な広さの守備範囲、どんな捕球体勢からも素早く送球する身体能力、人工芝の神宮に対して天然芝と土のマツダスタジアムは打球がイレギュラーすることもあるが、グラブさばきも抜群だ。「抜けたと思う打球も菊池に捕られる」と嘆く選手も多い。再三の好守で25年ぶりのリーグ優勝に貢献したインパクトは大きい。

 ゴールデングラブ賞だけではない。菊池は名人芸の守備だけでなく、今季は打撃も好調。打率・324、13本塁打で、172安打はリーグトップだ。17年に開催されるWBCで侍ジャパンの二塁を守るのは山田か、菊池か。山田は24歳、菊池は26歳とまだまだ若く、伸びしろが大きい。二塁はかつて人材難に悩まされたポジションだった。WBCで06年は西岡、09年は岩村、13年は鳥谷が二塁を守ったが、いずれも本職ではなかった。だが、今は違う。菊池とのハイレベルな競争が、山田をより進化させる。(記者コラム・平尾 類)

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2016年9月13日のニュース