中日ドラ1小笠原 甲子園V腕高卒新人“最遅”1勝 12試合目やっと

[ 2016年9月5日 05:30 ]

<巨・中>プロ初勝利の小笠原はウイニングボールを手にドアラと笑顔

セ・リーグ 中日5―3巨人

(9月4日 東京D)
 手を叩き、心から喜んだ。8回の猛攻。この回代打を送られた中日のドラフト1位・小笠原はベンチで立ったまま、大声を出していた。

 「点を取ってもらって、座って応援していたら申し訳ない。感謝の気持ちしかないです」。0―3から一挙4点を奪って逆転。12試合目の登板でついにプロ初勝利を手にした。

 「うれしいの一言。周りから見たら長かったかもしれないけど、毎試合毎試合、成長していけたと思う」

 巨人戦初登板。2回までに3点を失ったが、ここから成長の跡を見せた。3回は無死一塁から坂本、阿部、村田を3者連続三振。「テレビで見ていた頃から活躍していた人たち。何としても抑えたいと必死でした」。5回以降は無安打。7回は「行かせてください」と志願した。6安打3失点で自身初の2桁となる10奪三振。最多127球の力投で、チームの今季初の6連勝に貢献した。

 昨夏の甲子園では東海大相模のエースとして全国制覇。脚光を浴びて入団したが、5月31日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)のデビューから先発では9試合、好投しても援護のないまま開幕5連敗を喫した。以来、3カ月以上が経過したが「借金は来年返済する」と焦ることはなかった。

 「一人じゃないと追い込めない」。開幕1軍を逃し、2軍で初先発を控えた3月末。ナゴヤ球場に隣接する室内練習場の誰もいるはずのない空間に一人で遠投を繰り返す18歳がいた。黙々と汗を流す姿に関係者は「なかなかいない。意識が高い」と驚いたという。少し時間はかかったが、ぶれない姿勢がこの日、実を結んだ。

 東京ドームは思い出の地。小笠原は中学3年時、湘南ボーイズの一員として、ジャイアンツカップで優勝した。4年後、中日の背番号11を背負い、巨人を倒した。高卒新人では一番乗り。「やっとスタートラインに立てた。きょうのことは忘れて、また勝ち星を増やしていきたい」。すぐそう言った姿が、また頼もしかった。 (細川 真里)

 ◆小笠原 慎之介(おがさわら・しんのすけ)1997年(平9)10月8日、神奈川県生まれの18歳。藤沢市立善行小1年で野球を始め、善行中では「湘南ボーイズ」に所属。東海大相模1年の春からベンチ入りし、2年夏の甲子園に出場も初戦で盛岡大付に敗退。昨夏は全国制覇を果たしてU―18ワールドカップ日本代表にも選出された。15年ドラフト1位で中日入団。1メートル80、83キロ。左投げ左打ち。

 ≪73年仲根(近鉄)の10試合を上回る難産≫高卒新人の小笠原(中)が今季初勝利。ドラフト制以降、中日の高卒新人の勝利は89年今中以来7人目になる。巨人戦の初登板勝利は、87年近藤がプロ初登板でノーヒットノーランして以来チーム29年ぶり2人目。高卒新人の2桁奪三振は12年武田(ソ)以来で、チームでは前記近藤が初登板時を含め2度達成して以来2人目。また小笠原は昨夏の甲子園で優勝。春夏甲子園優勝投手が高卒1年目に勝利は同制度以降9人目で初勝利に12試合を要したのは73年仲根(近鉄)の10試合を上回る難産となった。

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