星野仙一氏が見据える東京五輪の“その後”「プロはWBC、アマは五輪」

[ 2016年8月28日 10:31 ]

楽天・星野仙一副会長

 来年1月で70歳。野球への情熱は巨人に闘志を燃やした中日の現役時代や「闘将」と呼ばれた監督時代と同じだ。20年の東京五輪で野球・ソフトボールが競技に復活した今月4日、仙台市内で楽天の星野仙一副会長を取材する機会に恵まれた。

 冒頭で「野球界にとって凄くいいこと」と喜んだが、すぐに表情は一変。「東京以降の五輪でも野球が存続するには、どうしたらいいか。それを考えるのはプロもアマチュアも、国も関係ない。全員で話し合う場が必要」と言葉に力を込めた。

 星野副会長の基本的な考えは「五輪=アマチュアの大会」だ。「プロはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)があるから五輪はアマチュア選手が主体で参加した方がいい」と言う。ただ話題性や競技レベルを少しでも向上させるため「サッカーのオーバーエージのように“プロ枠”として5人ぐらいを選べばいい」と持論を語る。

 自身は08年の北京五輪で日本代表監督として「オールプロ」のメンバーを率いた。だがシーズン中の8月で準備期間も満足に取れず、現地でも練習場所など劣悪な環境に苦しんで4位に終わった。「今後も日本やアメリカとか野球が盛んな国で五輪があるならいいけど、野球が盛んではない国での開催が多い。環境が悪い中でプロで何億も稼いでる選手がモチベーションを維持するのは難しい」と問題点を挙げる。そして「仮に五輪がアマチュアの最高峰の舞台となれば“僕はプロは無理だけど社会人で頑張って五輪に出たい”という選手が出てくる」と野球人口の拡大に確信を持つ。

 4年に1度の五輪。大会に懸ける思いの強さが見るものの心を打ち、喜びの笑顔も悔し涙も感動を呼ぶ。アマチュア選手を心から尊敬する星野副会長は「4年に一度の本番を目標に全てをピークに持っていく。出場している選手とは親子以上に歳が離れているけど、本当に尊敬する」と言う。

 毎年「カル・リプケン12歳以下世界少年野球大会」に出場する日本代表チームを支援するなど、底辺の拡大に向けて尽力している星野副会長。楽天監督を退任した15年からは「野球界への恩返し」も念頭に置いて活動しており、取材の最後には「底辺(野球人口)の拡大と環境の整備。この宿題に俺の残りの人生をかけてもいいと思っている」と強い決意を語った。

 東京五輪に限れば、どんなメンバー構成でも盛り上がるだろう。しかし、現状のままでは「その後」の恒久的な発展はない。最善の道は何か…。星野副会長の言葉は、野球に携わる全ての人間に向けて発信されている。 (記者コラム・山田 忠範)

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