【内田雅也の追球】阪神 0―4から明暗を分けた次の1点

[ 2016年8月27日 08:30 ]

<神・ヤ>4回2死一、二塁、鵜久森に適時打を打たれ、顔をしかめる秋山。左は坂本

セ・リーグ 阪神3―5ヤクルト

(8月26日 甲子園)
 日本サッカー協会会長など要職を歴任した岡野俊一郎が「サッカーの2点差は危ない」と語っていたのを覚えている。まだJリーグなどなかった1977年、日本代表戦のテレビ解説だった。

 「1点ずつしか得点できないサッカーで2点はすぐに追いつかれない安全圏だ。リードしている側に油断が生まれる。次の1点を失うと今度は焦る。焦れば乱れ、また失点を重ねて同点になる」

 野球でも同じことが言える。阪神元監督の岡田彰布から聞いた。<序盤3回までに4、5点をリードした時が危ない>と著書『そら、そうよ~勝つ理由、負ける理由』(宝島社)でも記した。<チーム内に「もう勝った」という空気が生まれる。これが危ない。「次の1点を失ったら流れが相手に行くぞ」と引き締めるのだが……>。

 この夜の阪神はこの展開だった。3回表に先発・岩崎優が鵜久森淳志に満塁本塁打を浴び4点を失った。確かにこれはこれで痛いのだが、先の論理でいけば、痛恨はこの後だった。大リーグ歴代3位2728勝の名監督トニー・ラルーサ(カージナルスなど)も「野球にがっくりは付き物だ。問題はその後だ」と語っている。

 スコア4―0となり、焦点は次の得点をどちらが奪うかだった。これで試合の流れが決まる。

 その裏、阪神は1死一、二塁と反撃機を築いたが、北條史也が投ゴロ併殺に倒れたのが痛い。

 外角ボール球スライダーに食らいついたが、ミートできなかった。北條は1回裏の打席で実にファウル8本、13球粘り惜しい中飛を放っていた。恐らく、相手先発デイビーズに自信を持って向かっていただろう。無念の凡退だった。

 直後の4回表、秋山拓巳が再び鵜久森に適時打を浴びて失った1点が痛い。2死無走者からの失点だった。

 この失点は甲子園球場の関係者喫煙室で、OB会長・川藤幸三とともに見ていた。「次の1点をどちらが取るかがカギだった」と同じことを言った。「期待して見ていたが……。しっかりせんかい」。目下、ウエスタン・リーグ最多9勝の秋山への叱咤(しった)が聞こえた。

 5回裏に3点を返したが、結局追いつけなかった。1回裏を除き、毎回走者を出したが、決定打を奪えなかった。

 やはり、0―4からの次の1点が焦点だったのだろう。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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