オリ安達 先の見えない潰瘍性大腸炎との闘い 命削るプレーに声援を

[ 2016年8月26日 11:00 ]

7月の月間MVPを受賞した安達

 私はずっとオリックス・安達了一選手を見ていた。24日、西武戦の試合前練習。体調不良により、4試合連続スタメン落ち。だが、この日は少し顔色が良かった。聞けば点滴を打って球場入りしたという。きょうこそ、いけるかもしれない。しかし、その期待は徐々に薄らいだ。

 守備練習からロッカールームに戻ってきた安達は「ダメかもしれない」とつぶやいた。打撃練習後には「ダメ」に変わった。顔をのぞき込んだ中島が「顔が青くなっている」と心配した。ほどなく福良監督やトレーナーと相談して5試合連続のスタメン落ちが決まった。練習冒頭で必ず安達の体調をチェックする福良監督が苦々しい表情を浮かべていた。

 詳しい原因はわからない。それでも1月に患った潰瘍性大腸炎が影響していることは確かだ。体がすぐに疲労を覚え、力が入らず、立っているのも辛くなるようだ。本人も「病気なのか、ただの夏バテなのか。初めてなので、自分でもよく分からない」と悩む。本人も周囲も状況を完全に把握できないため、出場選手登録を抹消できない。福良監督は「急に良くなることもあるから。出したいんだけどな。でも、無理はさせられない。将来のこともあるし。安達が一番悔しいはず」と話す。体調を気遣いつつ、最善の起用法を模索する日々が続く。

 安達は7月にリーグ最多の30安打を放ち、打率・380で月間MVPに輝いた。「全く想像していなかった。一時は野球ができるかどうか、分からなかったから」と喜んだ。5~6月にかけて薬の服用をやめ、その反動で体がだるくなる症状に襲われていた。その危機を脱したと私も思っていた。事実、「お腹の調子は良い」と最近も腹痛などの症状はなくなってきている。だが、連戦による疲労蓄積が、ここに来て一気に出てきたのかもしれない。

 この病気を発症した際、私は“出られない時期は必ずある”と思っていた。少し休養を挟んで、休みながら出てもいいのではないか。しかし、安達の心中は違った。「同じ病気の人が見ていて、きょうも出てないな、と思う。他の人のためにも頑張っている姿を見せたい。いつも試合に出るつもりでグラウンドには来ているので」。ギリギリのところで、支えているのはその気持ちだった。ファンレターとして、潰瘍性大腸炎を患っている人からも手紙が来るという。欠場している姿を安易に見せたくないのだ。

 試合後、記者は駐車場で選手達の帰りを待つ。去年までなら、打撃練習をしてから帰宅していた安達の帰りは、今年はかなり早い。体調はどう? 他愛もない話をした後、必ず安達は「じゃあ、もう帰ります。寝ないといけないので」という。寝ないといけない――。その言葉がいつも心に突き刺さる。

 私も一人のファンとして呼び掛けたい。グラウンドに立ち、いいプレーをしたら、是非とも大きな拍手を送ってほしい。安達がさばくショートゴロは、ただのショートゴロではない。力を込めてバットを振る姿には、言い方は悪いが、命を削って野球をしているような必死さが伝わってくる。オリックスは26日から1週間は仙台、千葉と敵地で戦う。しかも、体調管理が難しい屋外球場だ。必死にプレーする姿は、敵味方関係なく、野球ファンの心に響くと思う。 (鶴崎 唯史)

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