舞台は変わっても…野球できる喜びにあふれたプロ出身の社会人選手たち

[ 2016年8月11日 10:45 ]

元阪神の新日鉄住金鹿島の玉置隆投手

 人生は一本道ではない。時に曲がり、立ち止まり、そして再び前を見て歩き出す。7月に開催された社会人野球の祭典・都市対抗。プロの世界から身を投じた男たちのプレーには、野球ができる喜びがあふれていた。

 1回戦のJR北海道戦に先発した、新日鉄住金鹿島の玉置隆投手(29)。04年ドラフト9巡目で阪神に入団し、育成契約も経て昨年限りで退団した。都市対抗初マウンドは5回2/3を8安打1失点。「楽しかったけど、プレッシャーが凄かった。(プロとの違いは)明日があるか、ないか。相手の1打席に懸ける思いを感じた」と振り返った。

 JR西日本の藤沢拓斗内野手(26)は、昨季まで中日でプレー。1回戦の新日鉄住金かずさマジック戦では3番に入り4安打を放った。「プロから来て“こんなものか”と思われたくなかった」。中日時代は小笠原(現2軍監督)から「手を抜かずにやれ」などと助言された。13年ドラフト6位で入団も、プロ生活はわずか2年間。西濃運輸時代の監督だったJR西日本・後藤寿彦総監督に誘われ、再び社会人野球でプレーする。

 準決勝の東京ガス戦に志願先発した日立製作所・山本淳投手(34)。直球の最速は149キロ。7回5安打無失点の快投で、チームを創部100年目で初の決勝に導いた。「プロではチャンスを逃してばかりだった」。06年大学・社会人ドラフト3巡目で西武に入団も、プロでは未勝利。社会人野球最高の舞台で、チャンスをものにした。

 三菱重工名古屋の菊池正法投手(31)は元中日。1、2回戦に登板した。細山田武史捕手(30)はトヨタ自動車の正捕手として優勝、自身も優秀選手に輝いた。横浜・DeNA、ソフトバンクでプレー。プロ時代と変わらない明るい性格で、現在もチームのムードメーカーだ。かつての「幕張のサブマリン」、元ロッテの渡辺俊介投手(39)は新日鉄住金かずさマジックで兼任コーチを務める。1回戦のJR西日本戦では登板機会なし。今月27日の誕生日で40歳となる。不惑。今後については「分からない。(選手として)続けた方がいいのか、ゆっくり考えます」と静かに話した。

 真夏。甲子園では高校球児の熱いプレーが野球ファンの心を揺さぶる。大学、社会人、プロ…。将来も野球を続ける選手も多いだろう。それは決して、一本道ではないはずだ。ただそこに、野球のできる喜びがあることを願う。 (記者コラム・鈴木 勝巳)

続きを表示

この記事のフォト

2016年8月11日のニュース