長崎商魂見せた 8・9は特別な日 惜敗も終盤猛追光った

[ 2016年8月10日 05:30 ]

<山梨学院・長崎商>長崎「原爆の日」を迎え、1回裏終了後にベンチ前で円陣を組んで黙とうする長崎商ナイン

第98回全国高校野球選手権第3日・1回戦 長崎商3―5山梨学院

(8月9日 甲子園)
 1回戦4試合が行われ、29年ぶり7度目の出場となった長崎商は3―5で山梨学院に敗れた。これで初戦は4連敗で、4強入りした1952年以来、64年ぶりの勝利は飾れなかった。それでも、71年前の8月9日に長崎に原爆が投下された「原爆の日」に、終盤に3点を返して猛追するなど、ナインは最後まで諦めない姿をみせた。

 瞬く間に、甲子園の雰囲気にのみ込まれてしまった。長崎大会で5試合計45イニングを1人で投げ抜き、5失点の抑えたエース右腕の本田一政(3年)は初回に先頭から3連打を浴び、わずか4球で2点を許した。

 「出だしから調子が良くなくて、心が浮ついてしまった。余裕がなかった」

 それでも初回のマウンドから三塁側ベンチに戻ると、ナイン全員で円陣を組んで黙とうした。長崎に原爆が投下された71年前の8月9日午前11時2分に近い同5分。慰霊の夏に、犠牲者に思いをはせながら、本田は「力を貸してください」と天に祈った。3、7回に失点を重ね、11安打を浴びても、132球の熱投で最後までマウンドを誰にも譲らなかった。

 相手の山梨学院にとっても「特別な日」だった。清峰(長崎)を率いて09年センバツを制した吉田洸二監督も長崎生まれ。佐世保商3年夏に長崎大会で敗れた長崎商を相手に勝利し「こういう日に甲子園で試合をさせてもらった。生徒とともに平和を学んでいきたい」と話した。また、長崎出身で「6番・右翼」で先発した松尾孝太(2年)も「吉田監督と“凄い偶然だな”、“運命ですね”と話していた。8月9日は小、中学校のときには登校して平和集会があった」と振り返った。試合後、松尾には長崎商ナインから「頑張れよ」と声が掛けられた。

 長崎商の主将兼4番捕手の小出凌太郎(3年)は「リードが甘かったし、自分のせい。8月9日は長崎にとって大事な日だったし、戦争で亡くなった人たちのためにも勝つつもりだったのに…。自分が責任を取ります」と唇をかんだ。しかし、敗戦は誰のせいでもない。本田は「ずっとマウンドにいることができて楽しかった」と言った。胸を張って故郷に帰ればいい。

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2016年8月10日のニュース