【内田雅也の追球】メッセ“有利”で陥ったわな…慎重過ぎて自滅

[ 2016年8月7日 08:00 ]

<ヤ・神>追い込んだ後の勝負球を見極められたメッセンジャー

セ・リーグ 阪神1―6ヤクルト

(8月6日 神宮)
 3回途中、5失点KO降板となった阪神先発ランディ・メッセンジャーはどうも慎重過ぎたようだ。

 投球数は2回2/3で73球を費やしていた。特に4番・山田哲人、5番・ウラディミール・バレンティンには2打席とも四球で、計4四球を与えた投球に顕著に出ている。警戒が過ぎだのだ。しかもこの4四球のうち3個までが2ストライクと追い込んでから与えている。たとえば1回裏の山田は0ボール―2ストライクからだった。ボールとなった4球は外角か、低めに外れていた。

 勝負球がボール球が見極められた結果である。速球も変化球もキレがなかったとも言えるが、そんな球威以上に際どいコーナーを狙い過ぎる制球の問題ではなかったか。つまり、自滅である。

 では、なぜ過度に慎重だったのだろうか。一つは現在のチーム状況がある。相手ヤクルトは川端慎吾、畠山和洋、雄平らの主力を欠き、戦力は大幅にダウンし、苦戦している。阪神は逆に打線好調だった。

 そこに予告先発は実績十分で今季すでに9勝をあげているメッセンジャーと、3勝8敗の山中浩史。このマッチアップに試合前、ある評論家は「阪神は9割以上の確率で勝てる」と予想していたほどである。

 絶対有利の状況でマウンドに上がる先発投手は辛い。油断などはない。逆に「勝たねばならない」「負けられない」と慎重になるものだ。メッセンジャーはこの心理のわなにはまったのだ。

 警戒していた山田、バレンティンに、救援登板した島本浩也、高橋聡文、安藤優也が向かっていった投球が正解である。慎重だけではいけない。大胆さも、そして打者に挑む心も必要となる。

 投手―打者、一対一の対決なのだ。ルー・ゲーリッグ(ヤンキース)が1934年(昭和9)に来日した際「試合においては技術面だけによらず、精神面も重要視される」と語った。直接聞いた巨人初代監督・三宅大輔がスポニチ本紙コラム欄(63年11月21日付)で書いている。「君はライオンとにらめっこをしたことがあるか。なければ動物園でやってみたまえ。思いあたることがあると思う」。上野動物園で実際にライオンとにらみ合った三宅は「気合」の大切さを知ったそうだ。

 それは昔も今も変わらない。逆に投手にも同じことが言える、と結んでいる。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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2016年8月7日のニュース