光った金本監督の勝負勘 それでも勝てた理由はわからない

[ 2016年7月14日 08:40 ]

<ヤ・神>6回裏、好救援を見せ、岩崎(中央右)らに出迎えられるマテオ

セ・リーグ 阪神4-2ヤクルト

(7月13日 神宮)
 【内田雅也の追球】監督1年目の阪神・金本知憲は決断の難しさを感じていた。「瞬時に判断しなければいけない時がありますからね。正直言って、その判断が遅れたこともありました」

 この本音を試合前に行われた前半戦総括の会見でも打ち明けていた。「コーチにも相談するのですが、その意見が分かれる時もありますから」。ただし、決断における結果責任は負う。

 継投は監督最大の仕事と言われる。勝敗に直結し、そして最も難しい。続投か、交代か。代えるなら誰か。もちろん、データや傾向など根拠らしきものは探せばあるが、最後に頼りになるのは自身の勘ではないか。

 この夜は継投勝負だった。6回裏は好投の先発・岩崎優が無死一、二塁を招くとマテオをつぎ込み、ピンチを断った。

 無失点で切り抜けたマテオをほぼ全選手がベンチ前で出迎えた。後半戦に向けた抱負を「全員で戦っていきます」とした金本の姿勢を映し出すかのような光景だった。

 7回裏は2死二塁で安藤優也に代えた高橋聡文が坂口智隆に同点打を浴びた。藤川球児を復帰後初めて救援で2イニング使って延長に持ち込んだ。延長ではドリスも2イニングを投げて逃げ切った。

 日本ハム監督・栗山英樹はかつてスポニチなどで取材者だった。<取材する側はいつも「答え」を求めている>と『覚悟』(ベストセラーズ)に書いている。だが監督になって分かったのは<そこに答えはない>だった。<なぜなら、みんな答えを求めているわけではなく「結果」を求めて戦っているから>。決断のよりどころとなる勝負勘に根拠や理論などない。

 映画『海よりもまだ深く』のパンフレットに生物学者・福岡伸一が文章を寄せている。<how(いかにして)にはなんとか答えられてもwhy(なぜ)には決して答えることができない>。なぜ存在するのか? なぜ誕生したのか? といった疑問に科学は答えられない。だが<howの疑問に十分答えないうちには、決してwhyの疑問には到達できない>。

 なるほど、勝負の世界も同じではないだろうか。なぜという答えに行きつくには、多くの結果の積み重ねがいる。

 その一つがこの夜の勝利である。前半戦最終戦は見事な継投だった。金本も会心ではなかったか。それでも、なぜ勝てたのかという答えはわからない。それが野球の深さである。 =敬称略= (スポニチ編集委員)

続きを表示

2016年7月14日のニュース