春高バレーにも甲子園にも導いた指導者が!高校野球の異色監督

[ 2016年7月10日 08:10 ]

霞ケ浦の高橋監督

 ◎高校野球監督の世代交代

 近年の高校野球監督のトレンドは「若返り」「元プロ監督」「転身」の3つだ。

 まずは「若返り」から触れていきたい。昨夏をもって勇退した渡辺元智氏(横浜前監督)、高嶋仁監督(智辯和歌山)、前田三夫監督(帝京)、馬淵史郎監督(明徳義塾)など大ベテラン監督の甲子園出場頻度が低下し、出ても1回戦敗退が多くなった一方で、若い監督の活躍が顕著になってきた。

 1つのターニングポイントは2008年だ。同年春に当時26歳の比嘉公也監督(沖縄尚学)が、同年夏は当時38歳の西谷浩一監督(大阪桐蔭)が優勝に導いた。そこから新たな高校野球監督の時流が生まれた。

 現在、「若さ」と「実績」という点で先頭を走るのは小針崇宏監督(作新学院)になるだろう。2009年に26歳で夏の甲子園に登場すると、2011年には4強入り、2011年から昨年まで5年連続出場中。もうすでに、青年監督というよりも、全国的に有名な高校野球監督の一人といっても過言ではない。

 今年の甲子園はどこが出るのか? と同時に、この監督は何歳くらいか、にも注目すると面白いかもしれない。

◎人数も存在感も右肩上がり「元プロ監督」

 「元プロ監督」はアマチュア野球指導の規制が緩和されたことで、ますます増えてきている。数多くいる中で型破りな監督が、九州文化学園を率いる、元オリックスの古賀豪紀(ひでとし)監督だ。

 公式戦、練習試合関係なく、試合前シートノックをしないのは、全国でおそらくここだけだろう。「選手を試合に集中させたい。普段からしっかりと練習をしているのに、暑い時には試合前に着替えとかでバタバタするし、シートノックで試合前にケガをさせない」という理由があるそうだ。

◎春高バレーにも甲子園にも導いた監督がいる!?

 最後に取り上げたいのは「転身」した高校野球監督。

 まず、転身組の代表的な監督は、昨夏の甲子園にも出場した遊学館を率いる山本雅弘監督だ。遊学館野球部創部とともに監督に就任し、1年4カ月で聖地・甲子園へ導き、これまで春夏合わせて7回の甲子園出場という実績十分な山本監督は、プレーヤーとしては陸上やスキーをやっており、本格的な野球経験はなかった。

 また、山本監督はもともと星稜中野球部で指導していた。このような元中学野球指導者というと、今春のセンバツではベスト4の秀岳館を率いた鍛治舍巧監督(中学硬式・枚方ボーイズで指導)や、準優勝の高松商・長尾健司監督(香川大教育学部付属坂出中などで全国大会出場)などの名前が挙がる。

 また、ソフトボールと野球で功績を残した監督というと、創志学園の長澤宏行監督だ。性質が近いスポーツ同士ということで、両方で成功することはわからなくもない。

 しかし、歴史を紐解くと、他のスポーツの指導者としても、高校野球監督としても全国大会に導いた監督がいることを知っているだろうか? それは霞ヶ浦の高橋祐二監督だ。高校時代はエースとして活躍し、日本体育大卒業後、母校・霞ヶ浦に体育教師として戻ってきた。しかし、最初に就いた顧問はバレーボール部。もちろん野球部の指導を希望していたが、顧問の椅子が空かなかったのだ。

 そこで、未経験ながらバレーボールを勉強して、19年間で茨城県の新人戦優勝を2回、2001年には春高バレーに茨城代表として出場した。その後、念願の野球部監督に就任すると、毎年のように好チームを作り上げ、昨年の夏に甲子園出場を果たした。

 バレーボールの指導があったからこそ、見識が広がり、スポーツ科学をもっと実戦的に取り入れることにつながったという。その指導のおかげで、昨秋にDeNAから指名された綾部翔のようなスケールの大きな選手が育っていくのだろう。

 今年の夏は指導者にも注目してみると、より楽しめるかもしれない。(『週刊野球太郎』編集部)

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