【鈴木啓示の視点】藤浪よ、161球の経験ムダにするな

[ 2016年7月10日 07:40 ]

<神・広>降り続く雨の中、8回まで自己最多161球8失点の藤浪

セ・リーグ 阪神1-7広島

(7月9日 甲子園)
 敗因は二つある。まずは1点を先制して、なおも無死満塁だった2回の拙攻だ。打順は1、2、3番。ビッグイニング、最低でも2、3点は取れると踏んだのだが、西岡、鳥谷があえなく凡退。江越も3球続いた真っすぐをいずれも空振りしてしまった。2球続けてストレートを空振りしたら、投手は3球目もやはりストレートを投げたくなる。変化球で打たれたら、やはり悔いが残るからだ。見え見えのストレートを空振りするのだから、江越の力負けと言わざるを得ない。

 2つ目は、直後の能見の投球だ。2死一、三塁で新井を迎えると、1、2球目の変化球を見逃され2ボール。ストライクを取りに行った3球目の内角変化球を、左越え3ランされてしまった。絶対に長打だけは避けなければいけない場面である。となれば、球種は問わないまでも、外角低めへ投げなければならない。きちっと制球できれば、ヒットはあっても長打はない。困ったときに、そこへ投げきる技術を、日頃から養う必要がある。味方が1点で終わったことは仕方ないのだから、能見クラスは我慢しなければならない。

 投手のことで書き加えると、前日の一戦で精彩を欠いた藤浪は161球を投じた。近年のゲームでは珍しい数字だ。8回8失点の内容はともかく、120~130球を超えたあたりで良いボールが2、3球はあった。それぐらいの球数になれば握力が減り、制球が利かなくなってくる。それでも体全体を使って投げることができれば、力を入れなくとも良いボールを投げることはできる。足腰の力で回転を使えれば、腕は振るのではなく、勝手に振られるのだ。

 「ピッチングに力はいらない。大切なのはタイミングだな」ということに、藤浪が気づけたかどうか。人間は長く、強く力を使うことはできない。力を抜いて初めてワンポイント、投手で言うならリリース時に力を入れることができるようになる。藤浪は今回の経験をムダにしてはいけない。今後に生かしてほしいと、切に願う。(スポニチ本紙評論家)

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2016年7月10日のニュース