【内田雅也の追球】阪神 初回、重盗の失点はサイン伝達ミスか

[ 2016年7月9日 08:45 ]

<神・広>サインミス?初回2死一、三塁、一塁走者・鈴木(右から2人目)がスタートを切り、捕手・岡崎は二塁に送球するも重盗を許す

セ・リーグ 阪神2―8広島

(7月8日 甲子園)
 大リーグには「ミスをするのは選手、それを許すのがファン」ということわざがある。ミスや失敗の多い野球だ。温かな声援は実にありがたい。

 だが、同じミスでも中身による。入場券完売。4万6046人が雨にぬれていた。昔のように甲子園球場の窓ガラスを割り、壁に八つ当たりする者はいないが、こんな惨敗は許せないだろう。

 1回表に失った3点目が問題である。藤浪晋太郎は2死満塁から鈴木誠也に左前2点打された。真っ向勝負の結果で、これは仕方がない。

 2死一、三塁から重盗で失った3点目だ。詳細はともあれ、サインの伝達ミスだろう。

 一、三塁では、守備体形や捕手の送球先はベンチから指示がある。この時も打者・安部友裕への初球を投じる前、さらにより警戒が必要となる2ストライクと追い込んでから、捕手の岡崎太一がベンチの指示を受け、ブロックサインで内野手に伝えていた。

 「作戦上のことは言えません」とヘッドコーチ・高代延博は口をつぐんだ。推測だが、二塁手か遊撃手が投手―二塁間で中継カットに入り、本塁突入を阻止する指示ではなかったか。いや、作戦はどうでもいい。誰が間違えたかも構わない。ただし、この失点はいただけない。

 西本幸雄(故人)はスポニチ本紙評論家時代、サインミスを「恥ずかしい」としていた。「オープン戦や春先ならサインミスもあるだろう。何試合も戦って、まだサインを間違うとは恥ずかしい」

 相手先発は今季過去15試合すべてでクオリティースタート(QS=6回以上、自責点3以下)を満たしているクリス・ジョンソン。3点目は致命傷だ。必死で防戦すべき場面でのミスだった。

 3回表は三盗を許した直後に犠飛とミスを突かれた。前監督・和田豊は現役時代二塁手で「三盗されるのは二遊間コンビの恥だと思っていた」と話していた。これも「恥ずかしい」失点である。

 1回は江越大賀の安打処理、3回は大和の軽率守備と失策が絡む。8回表は藤浪のボークもあった。記録上ミスはなくとも藤浪はゴロを弾き、原口文仁は後逸もあった。

 集中力欠如を問うと、高代は何か答えたが聞き取れなかった。情けないが、この敗戦を忘れてはいけない。「恥を知るは勇に近し」と四書の中庸にある。恥を知った猛虎たちは、後に成長があるだろうか。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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2016年7月9日のニュース