周囲が語る福留 強がり、鈍感、頑固、自信家…全て野球にプラス

[ 2016年6月26日 05:30 ]

<広・神>6回、福留は日米通算2000本安打を達成し守備につく前、ファンの声援に応える

セ・リーグ 阪神2-4広島

(6月25日 マツダ)
 プロ野球選手としての実績は数字が物語る一方、野球に対する真摯(しんし)な姿勢にも定評を持つ。福留とは一体、どんな男なのか。特に近い間柄の方々の証言を元に「人間・福留」の知られざる一面に迫った。(取材・構成 山添 晴治)

 走攻守の三拍子そろった天才。練習熱心でストイックなのも有名だ。ただ、特に親しい人たちは、違った意味での「大物」ぶりを明かした。まずは福留が兄貴分と慕い、毎年ハワイで合同自主トレをともにしてきた山崎武司氏を直撃した。

 「何千人と野球選手を見てきたけど、なかなかいない性格。とにかく気持ちが折れないし“参った”と絶対言わない。強がりかも知れないけど、その強がりが良い」

 兄貴分にさえ弱みを見せない。「クールに格好良くというか。知らない人はキザと思うかもしれないけど、俺は知っているから。苦しい時も顔を見たら分かる」。驚かされたのが1年目のオフの出来事だ。

 「当時は星野監督が“やれ”と言ったことは絶対。自主トレも半ば強制的だったけど、アイツだけ“ハワイでやります”と自分で言いに行った。1年目なのに自分で言ってきたから、監督も“そうか”ってね。大したもんだと思った」

 「器用そうに見えて意外と不器用なんですよ」と話すのはPL学園、中日の先輩に当たる立浪和義氏だ。「打撃もいろいろ試行錯誤しながら固めてきた。そういう人間の方が長続きする」。日本復帰後に苦しんだ時期についても「阪神だから周りにボロカスに言われたけど、アイツは良い意味で鈍感なんでね」と分析した。特に印象に残っているのは、まだ新人内野手だった99年9月4日の広島戦(広島市民)でのサヨナラ落球の後日談だ。

 「即席で左翼を守って何でもない飛球を落とした。あの時、高代コーチ(現阪神ヘッドコーチ)が星野監督に“外野も行けます”と進言していた。それで次の日に食事会場で高代さんが落ち込んでいると、“あれ、高代さん、どうしたんですか?そんな顔して”と声をかけているんですよ」

 外野手に本格転向した01年秋キャンプから打撃コーチとして密着指導した佐々木恭介氏(現・大和高田クラブ監督)は「自分の持っているものは絶対に曲げない。芯の強さ、継続する力は他の人間の比じゃない」と断言した。近鉄監督時代の95年ドラフトで7球団が競合した1位抽選を引き当てながら入団拒否され、時を経て中日で師弟関係になった不思議な縁。「アイツは“近鉄が余計な指名をしなければ2500本は打っていますよ”と言うと思うけど、僕は逆に“近鉄にすんなり入っていれば、それよりもっと打っとるわ”と言いたい。すんなりプロに入ってアメリカにも行かなければ3000本くらい打っていたんじゃないですか。お互いに意地っ張りで頑固。でも、頑固さは向こうの方が上やな」と笑った。

 最後は同じ77年生まれの中日・荒木だ。ライバルでも親友でもある福留を「自信家」と評した。「悪い意味じゃなくね。打てなかったら“今日は投手が良かった”と割り切れるし、ミスを謝ることもしない。ただ、プロにはそれも大事。一緒にメシを食っていてもいい勉強になった」。荒木も2000安打まで62本と迫っており、「あいつがケガ(左太もも裏痛)している間にこっそり抜いてやろうと思っていたんだけど」と悔しがった。

 強がり、鈍感、頑固、自信家。聞こえは良くなくても親しい間柄だからこその褒め言葉だ。なぜなら、全てが野球にプラスとなっているから。絶対にぶれない太く強靱(きょうじん)な芯を持つ心。天才・福留のもう一つの凄さだった。

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2016年6月26日のニュース