阪神・青柳を悩ませたマリンの風 スライダー決まらず直球系狙われた

[ 2016年6月9日 09:20 ]

<ロ・神>4回無死、細谷の時、背中を通過するボール球を投げる青柳

交流戦 阪神3―8ロッテ

(6月8日 QVCマリン)
 【内田雅也の追球】QVCマリンフィールドの電光掲示板には風向と風速が常時示されている。矢印は大体、左翼から右翼や本塁。前夜2~3メートルだった風力はこの日3回で6メートルと強さを増した。幕張の浜を控える名物の強風である。

 阪神先発の新人・青柳晃洋はこの風に悩んだのではないか。4回2/3で6安打、4四死球の6失点でのKOだった。

 目立ったのはスライダーのすっぽ抜けである。80球のうち、いわゆる逆球が実に15球を数えた。スコアブックに記してある。捕手・原口文仁が捕れない球も3球もあった(4回裏細谷圭5球目、5回裏角中勝也初球、ナバーロ3球目)。

 初めに変調が見えたのは2回裏2死三塁での加藤翔平への初球である。スライダーが左打者外角に抜け、原口は懸命に捕った。この時、青柳はタイムを取り、球審にボール交換を要求している。ニューボールで投げた2球目スライダーもまた外角に抜けた。マウンド上で首をかしげていた。

 不安は的中し、続く3回裏に集中打を浴びた。デスパイネ四球はスライダーが3球連続で抜けたもの。3安打はすべて直球系だった。

 投手コーチ・香田勲男は「左打者対策」を課題にあげ「変化球の精度。スライダーの抜け球も多かったね」と話した。

 セ・リーグの多くの投手はこの千葉での強風に悩む。ましてや新人には酷だろう。5月31日にはセ・リーグ最多6勝をあげている広島・ジョンソンが敗戦投手となり「不思議な感覚」と話した。「前からも背中からも風がきていた」。

 千葉の風は投手の背中から来て、さらにスタンドに当たって跳ね返り、正面から受ける。

 かつて、ロッテでクローザー、先発として活躍した牛島和彦は「跳ね返ってくる向かい風に当てて、変化球をより変化させた」と話していた。1987年、中日からロッテへ移籍し、当初は強風に苦労したが、逆風を利用する術を編み出した。

 この日のロッテ先発・関谷亮太もカーブ、スライダーやチェンジアップなどを、逆風を使って変化させていた。牛島から術が受け継がれているのかもしれない。この変化に阪神打線は戸惑った。

 借金は初めて2個まで増えた。青柳がマウンドで味わった逆風は、いまチームそのものが直面している。逆風も糧に、立ち向かう時である。=敬称略=(内田雅也編集委員)

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2016年6月9日のニュース