ヤクルト 「5番・川端」の新たな可能性 同僚、ライバルが認めた打撃技術

[ 2016年6月4日 10:25 ]

<ヤ・オ>3回2死一、三塁、川端は逆転となる右中間三塁打を打つ

 ヤクルトの記事では山田を取り上げる機会が多い。今年も58試合消化して打率・330、17本塁打、14盗塁(3日現在)と2年連続トリプルスリーへ視界良好だ。だが、勝負を決める一打を放つ山田の前で、チャンスメークする川端がいるからこそ山田も輝く。山田とタイプは違うが、あらゆる球種、コースの球に対して広角に安打を打ち続ける川端の打撃技術は選手間の評価が高い。

 オリックスから今年加入した坂口は「今までいろいろな選手を見てきたけど、川端慎吾は別格だと思う。投手との間合いで打つ雰囲気しかない」と目を見張り、バレンティンも「彼はヒットマシーン」と称える。他球団の選手も同様だ。同じ左打者のDeNA・倉本が「川端さんの打撃は僕のお手本」と右足の上げ方、タイミングの取り方、スイング軌道など打撃フォームを参考にしている。川端も「似ていますよね」と驚くほどだ。

 もっと注目されてもよい選手に思える。他球団に行けば、不動の3番を十分に張れる素材だ。だが、「僕はいいんです、今のままで。(山田)哲人はすごいです。あいつには伸び伸びとやってもらってね。僕らが支えますから」と、昨季の首位打者は縁の下の力持ちを進んで引き受ける。 

 チームを思う気持ちは人一倍強い。今年は最下位に低迷する状況で考えすぎたのかもしれない。昨季は「2番・三塁」で犠打をしない真中野球の象徴だったが、最下位に低迷するチームで進塁打への意識にとらわれた。

 打率・303(3日現在)と決して悪くないが、5月25日の阪神戦(神宮)から5番に配置転換。真中監督は「川端は打率が3割前後だと打ってないと思われるからかわいそうだよね」と同情しつつ、「チームのことを考えて、打撃が小さくなっている部分もある。併殺打になってもいいから思いっきり打ってもいい」と期待を込めた。山田の前を打つ2番から、山田の後を打つポイントゲッターの5番への打順変更。自己犠牲の精神が強い川端はもっと自己主張してもいい。指揮官の願いは、川端の新たな可能性を引き出す転機になるかもしれない。

 今年は3月にインフルエンザB型を発症。台湾と強化試合を行った侍ジャパンへの参加を辞退した。5月18日には食あたりが原因と見られる体調不良で2試合欠場した。「酒も飲まないし、不摂生もしてないんですけど…。もう熱が上がる瞬間がわかりますよ」と自虐的に話す。

 でも、人生は七転び八起き。運も味方する時がきっとくる。「これ以上は悪いことも起きないでしょう。チームも上がっていきますよ。セ・リーグの混戦に引き離されなければ、昨年の経験もある。必ずチャンスは来る」。リーグ連覇と2年連続首位打者へ。戦いはこれからだ。(記者コラム・平尾 類)

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