【キヨシスタイル】野球の醍醐味奪うコリジョンルール

[ 2016年5月24日 10:25 ]

11日の阪神―巨人戦の3回2死二塁、脇谷の中前打で二塁走者・小林誠がホームを突きタッチアウトの判定も、リプレー検証後にセーフになった

 スッキリしない。今季から導入されたコリジョンルールだ。ひどかったのは11日の阪神―巨人戦(甲子園)。3回表、巨人の攻撃だった。2死二塁から脇谷の中前打で二塁走者の小林誠が本塁に突っ込んだ。センターの大和からのワンバウンド返球を本塁をまたぐようにして捕った原口は小林誠にタッチ。「アウト」と判定されたが、巨人側の抗議を受けてリプレー検証の結果、原口が走路に立っていたとして「セーフ」に覆ったのだ。

 なんでやねん。原口はバウンドに合わせて本塁前からベースをまたぐように下がって捕球したけど、走路はしっかり空けていた。それなのに…。阪神・金本監督の気持ちは痛いほど分かる。こんなことをしててプロ野球は大丈夫かと思った。ホームプレート上のスリリングなタッチプレー。ハラハラドキドキの醍醐味(だいごみ)を新ルールが奪おうとしているのだ。

 そもそもコリジョンルール導入の出発点は故障防止。それは分かる。でも、ケガを恐れたプレーにファンは感動するだろうか。オネエの「いらっしゃ~い」みたいなプレーを誰が喜ぶ?一番いけないのはラフプレー。完全にアウトのタイミングなのに捕手に脳振とうを起こさせるくらい激しいボディーアタックだ。捕手が本塁を完全にふさいでいたら走者はぶつかっていくしかないが、ラフプレーかどうかは球審が分かる。故意と判断すれば即退場。さらに連盟が長期間の出場停止など厳罰を下せばいい。

 米国で生まれたベースボール。コリジョンも大リーグが導入した新ルールに従ったわけだけど、日本独自の判断でルールを考えていってもいい時代だと思う。捕手に許される動きの明確な線引き。エキサイティングなプレーを維持しつつ故障を防止する方法はきっとあるはずだ。

 今がいいタイミング。「厳正なる第三者」は必要ない。当事者である監督、コーチ、選手、審判団が意見を出し合ってプロ野球が盛り上がる方策を考えてほしい。「来年に向けて」なんて悠長なことは言わず交流戦やオールスター期間を利用すればいい。ペナントレースが佳境に入り、1点の重さが増してくる後半戦はスッキリした気分で迎えたいから。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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2016年5月24日のニュース