イチロー「バカな盗塁はしない」 500盗塁成功率81%超の誇り

[ 2016年5月1日 05:30 ]

<ブルワーズ・マーリンズ>初回、米通算500盗塁となる二盗を決めるイチロー(AP)

ナ・リーグ マーリンズ6―3ブルワーズ

(4月29日 ミルウォーキー)
 また新たな金字塔!マーリンズのイチロー外野手(42)が29日(日本時間30日)、ブルワーズ戦に「1番・右翼」で出場し、初回に二盗を決め、史上38人目の大リーグ通算500盗塁をマークした。通算2900安打とのダブル達成は史上8人目の快挙。日米通算では699盗塁とした。この日は2安打1打点の活躍で、メジャーでの通算安打数を2945とし、単独32位に浮上。現役最年長野手、42歳のレジェンドが、次は3000安打の偉業へ加速する。

 6連勝に貢献し帰り支度をするイチローにサプライズが待っていた。「Congratulation!(おめでとう)」。デービッド・サムソン球団社長が記念の二塁ベースをプレゼントした。記録を打ち立てるたびに粋な祝福をしてくれる球団、そしてチームメートに「いつもそうですけど、ああいうのがうれしい」と感謝。その目は赤く染まっていた。

 昨季の首位打者&盗塁王で不動の1番だったゴードンが前日の試合後に禁止薬物使用が発覚し、80試合の出場停止。その代役として1番に指名されたのがイチローだった。初回。先発デービーズの2球目を右前打すると、3度のけん制をかいくぐり次打者プラードの10球目に二盗を決めた。今季2個目の盗塁。メジャー16年目で通算500に到達した。

 「まあ、特別な感慨はないですけどね。随分、時間かかっちゃいましたから」。涼しい顔で言ってのけたが、今なお衰えぬスピードに理由はある。3月のオープン戦。二塁内野安打を放った際に一塁まで3・90秒で駆け抜けた。4秒を切れば俊足といわれる。そのことを聞くと「このスパイクですね」と説明した。

 昨季から導入した「ワールドウィング・エンタープライズ」(本社・鳥取市)のビモロスパイク。100メートルの世界記録保持者ウサイン・ボルトの走りをイメージして開発したもので、薬指から着地して母指球(親指付け根の膨らんだ部分)に力を伝えることで歩幅を伸ばす特長がある。最先端の道具に加え、このオフは徹底的に下半身を鍛え、尻からふくらはぎにかけては一回り以上大きくなった。その結果、走塁の際、頭は上下動せず重心はさらに低くなった。

 イチローは盗塁に対する信条を語った。「僕はバカな盗塁は基本的にはしない。成功率半分(50%)という感覚ではいかない」。成功率81・4%は、歴代最多通算1406盗塁のリッキー・ヘンダーソンの80・8%を上回る。スピードだけではなく、タイミングや相手投手の癖を見抜く走塁センスで勝負してきた。

 前夜はロサンゼルスでのナイター後に移動し、ミルウォーキーの宿舎に着いたのは朝7時すぎ。そんな中で休養を与えられたのは右翼を守る26歳の主砲スタントンだった。「いいんじゃない?休んでいただいて。みんながしんどかったら僕が行くというのがパターンですから」と笑い飛ばしたイチロー。

 9回には左前適時打も放った42歳は、誰よりも元気だった。(ミルウォーキー・笹田 幸嗣通信員)

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