「物置き」問題 甲子園なら?神宮は大学野球の聖地、異論噴出も当然

[ 2016年4月28日 09:15 ]

東京五輪・パラリンピック組織委が大会前後の使用中止を要望している神宮球場

 最近、神宮球場で顔見知りの大学生の野球選手と話すと、いつも聞かれることがある。「東京五輪で神宮ってどうなっちゃうんですか?やっぱり神宮ではできないんですか?」。不安そうな顔だ。20年東京五輪では今、大学に在籍する選手たちは卒業しているが、やはり後輩たちのことを考えるといたたまれない気持ちになるのだろう。

 高校野球にとっての聖地が甲子園なら、大学球界の聖地は神宮だ。東京五輪組織委員会からの使用中止要請問題。26日に使用4団体(ヤクルト、東京六大学、東都、東京都高野連)は組織委との初交渉で借用期間の短縮と用途の変更を求めた。

 例えば「甲子園を資材置き場やスタッフの控え室にしたいからその期間は使用を中止してほしい」と言われたら、野球ファンも国民も黙っていないだろう。今回の神宮使用中止要請はそれと同じくらい深刻で重大な問題だ。全国の高校、大学生が憧れ、人生が変わるかもしれない球場。建設時の歴史的経緯などからプロより学生に優先使用権が与えられているほどの球場だ。だから「神宮を物置きにするな」という反対意見が噴出するのも当然だ。さらにあまりに大まかで長い使用中止期間。しかも唐突に「強制追い出し」のような案を提示されたことで神宮関係者は野球場としてや、そこでプレーすることの価値を踏みにじられたような思いだっただろう。

 1923年の開場から神宮の伝統と施設を選手たちのために、ずっとそこで守ってきている人たちだ。関係者の落胆と憤りはいかばかりか。ある関係者は「絶対に7カ月(の使用中止)は断固拒否」と強い口調で言い切った。今後は組織委が期間短縮に応じるのか、どんな代案を持ち出すのかが焦点となる。

 20年春、大学4年生で初めてリーグ戦のベンチ入りを果たす選手もいるだろう。もしかしたら、それが神宮でプレーする最初で最後のチャンスかもしれない。彼らの機会や目標を、いくら東京五輪に関わるとはいえ、絶対に奪ってはならない。(記者コラム・松井 いつき)

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2016年4月28日のニュース