いよいよメジャー開幕…その陰でキャンプでの厳しい競争、泣き笑い

[ 2016年4月4日 10:25 ]

 日本のプロ野球から遅れ、大リーグも3日(日本時間4日)のパイレーツ―カージナルス戦など3カードを皮切りにようやく開幕した。記者は大リーグ担当3年目だが、キャンプ取材は今年が初めて。ヤンキース・田中が、キャンプイン当初に「今は(クラブハウスが)騒がしいですけど、そのうちだんだん静かになって、最後はシーンとなっていますよ」と話していた理由を実感した。

 ヤ軍のキャンプは、メジャー契約の40人に、26人のマイナー契約の招待選手が加わり、総勢66人で2月25日から投手、野手がそろっての練習が始まった。実績のあるロドリゲスやサバシアらは大きなロッカーに加えて隣のロッカーも割り当てられ、ロッカーが一つの田中も元守護神リベラの後を受け継いだとあって他のロッカーよりも若干広い構造になっている。マイナー選手はポジションにもよるが、基本的にクラブハウスの中央などに割り当てられる。キャンプイン当初は選手と日米メディアが入り交じり、英語、スペイン語、日本語が飛び交うクラブハウスは密集度が高かった。

 マイナーキャンプ行きの通告が始まったのは3月13日だった。日系3世捕手のヒガシオカや、OBの松井秀喜氏がマイナーで指導してきた2メートル4の期待の大砲ジャッジら17人がメジャーキャンプから離れた。翌日にも1人、19日には7人と減り、次第に空白のロッカーが目立つようになっていった。08年ドラフト7巡目でヤ軍入りし、祖父母が長崎出身というヒガシオカは、日本人を見かけると両拳を握って「オス!」とあいさつし「この近く(タンパ)に井川が好きだったすし屋があるよ」と気さくに話してくれたナイスガイ。オープン戦では「今年は何とかメジャーに残りたい」と話していた通り、7打数4安打で打率・571、1本塁打と猛アピールしたが、その願いもかなわず、高いメジャー契約の壁に阻まれた。

 一方で大リーグ25人枠入りを勝ち取ったのが、ベネズエラ生まれの23歳で、大リーグの中では1メートル78センチ、68キロと大リーグの中では相当小柄な部類に入るトレイエスだ。今年1月12日に一度はドジャースからトレードでヤ軍入りしながら、移籍3日後には40人枠から外れ、ウエーバーでエンゼルスに移籍。エ軍でも移籍2日後に40人枠から外れ、ウエーバーで2月1日に再びヤ軍に復帰するなど、1カ月の間に延べ4球団に所属するという大リーグならではの移籍を繰り返した。しかし、オープン戦は24試合で打率・279と結果を残し、内野ならどこでも守れる万能さが、ジョー・ジラルディ監督の目に留まった。大リーグ通算成績はわずか8試合に出場というトレイエスは「これは自分にとって特別な瞬間。忘れることはない」と感激した。

 入れ替わりの激しい移籍、厳しい競争を経ていよいよ開幕した大リーグ。ヤ軍はこのオフに30球団で唯一FA補強がなく、船出した。今季はどのような戦いが繰り広げられるのかが楽しみだ。(記者コラム・東尾 洋樹)

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2016年4月4日のニュース