2回まで42球…球児、修正力がもたらした4580日ぶり先発白星

[ 2016年4月4日 05:52 ]

<D・神>復帰初勝利を挙げ、金田(右)からウイニングボールを受け取る藤川。左は金本監督

セ・リーグ 阪神8―3DeNA

(4月3日 横浜)
 金本監督と固く握手を交わすと、阪神・藤川はとびっきりの笑顔を浮かべた。お尻のポケットに、ウイニングボールをグッとねじこむ。

 12年7月14日ヤクルト戦(甲子園)以来、1359日ぶりの白星。先発では03年9月19日の巨人戦(東京ドーム)以来、実に4580日ぶりだ。今季2試合目でつかんだ、指揮官の48歳の誕生日も祝うダブルの歓喜をかみしめた。

 「監督の誕生日に勝利をプレゼントできてホッとしている。久しぶりにタイガースに戻ってきて、この歓声を忘れていた。それを思い出させてもらったし、心強かった」

 直球の制球に苦しんだ。ブルペンのマウンドの軟らかさと、球場の硬さとの違いに戸惑った。「上半身だけで投げていた。下に力が入らなかった」。初回に2四死球。2回にも先頭・倉本から2者連続で四球を与え、2イニングで42球を費やした。3回以降はツーシームやスライダー、カーブを織り交ぜた投球に切り替え、見事に修正。6回を2安打無失点に封じた。

 負けられない理由があった。練習用グラブの内側に、その名前を刺しゅうする米ロサンゼルス在住の妻子の存在。13年にトミー・ジョン手術を受けて右肘にメスを入れ、はい上がる努力を重ねる右腕を家族が支えてくれた。愛する長女は現地の学校に通う。昨年末の自主トレ後。藤川がふと、つぶやいた言葉がある。

 「娘は僕なんかより全然、英語がしゃべれるよ。中国系の友達もいるから中国語も話せるし。東京五輪の時には大学生になっていると思う。娘は今は向こう(米国)にいるけれど、“東京五輪に関する仕事を手伝いたい”って話していてね。それまではね」

 40歳シーズンを迎える20年まで父の勇姿を見せ続けたい。そんな思いが詰まった91球だった。家族は子供たちの春休みを利用して近く一時帰国する。「4日間だけね、妻と子供が帰ってくるんですよ。(ウイニングボールは)その時に嫁さんに見せようかなって。渡すと荷物になるでしょ。娘は喜んでくれるかな…」。父として、先発として――。藤川の背中は誰よりも大きく見えた。(湯澤 涼)

 ▽阪神・藤川の前回先発勝利 すでにチームはリーグ優勝を決めており、迎えた03年9月19日の巨人戦(東京ドーム)に先発。3回まで無安打で、4回に二岡、高橋由の連打でピンチを迎えるも清原を三ゴロ併殺打に仕留めた。5回78球を投げて3安打3奪三振で無失点。入団5年目だった藤川はこの白星がシーズン初勝利で「思い通りの投球ではないけれど、うれしい」。翌04年から中継ぎになった。

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