智弁学園サヨナラで初V エース村上が延長11回決めた

[ 2016年4月1日 05:30 ]

<智弁学園・高松商>延長11回裏(智)2死一塁、智弁学園ナインは村上(右)のサヨナラ適時二塁打で優勝し大喜び

第88回選抜高校野球大会第11日・決勝 智弁学園2―1高松商

(3月31日 甲子園)
 決勝が行われ、春夏通じて初めて決勝に進んだ智弁学園(奈良)が、延長11回の末、高松商(香川)に2―1でサヨナラ勝ちし、春夏通じて初優勝を飾った。エース村上頌樹投手(3年)が決勝二塁打を放ち、投げては全5試合47イニングを1人で投げ抜いた。奈良勢の優勝は1997年の天理以来19年ぶり2度目。24年の第1回大会王者の高松商は56年ぶり3度目の優勝に届かなかった。

 村上は「抜けろ!」と心の中で叫んだ。1―1の延長11回2死一塁、直球を捉えた打球は中堅手の頭上を越えて、一塁走者の高橋が一気に生還した。二塁ベースを回った村上は瞬く間にナインにもみくちゃにされた。

 「真っすぐが来ると思った。いい感じでバットが振り抜けた。智弁の歴史を変えられたのは本当にうれしい」

 準決勝の龍谷大平安戦から2戦連続のサヨナラ勝ちで、春夏の甲子園で初めて頂点に立った。村上は計5試合で47イニング、669球を1人で投げ抜いた。最後は「人生初」のサヨナラ打。センバツ決勝で勝利投手がサヨナラ打を放つのは35年ぶりの快挙だ。鮮やかすぎるフィナーレだった。

 防御率0・38とマウンドでは抜群の安定感を発揮した。最速142キロの直球は高めを有効に使って、変化球は低めと高低を利用して抑えた。同点とされた8回、なおも1死二塁では4番の植田響を141キロの直球で空振り三振、5番・美濃も真っすぐ勝負で捕ゴロに仕留めた。

 転機が昨秋の近畿大会にあった。準々決勝の大阪桐蔭戦で先発し、4―9で完敗。投手に押し出し四球を許すなど散々な内容に「駄目だと思った。これでは勝てない」と奮起した。甲子園で勝てる投手を目指し冬に直球を磨いた。1日5食にして体重を6キロ増の78キロとし、球威とスタミナが付いた。大会期間中、宿舎では1日3食となるため夜食をコンビニで買い維持に努めた。それでも試合終盤は「下半身に力が入ってこなかった」。限界が近づく中、先頭打者に安打を許した9、10回は気迫で抑えた。

 仲間の支えにも応えたかった。ベンチに入れなかった部員4人が毎試合A4用紙30枚以上のリポートを作成。決勝戦前日には徹夜で作業してくれた。相手打者の弱点を突く詳細なデータは投球の手助けになった。チーム一丸となってつかんだ悲願の初優勝。村上は「智弁といえば(春夏計3度優勝の)和歌山、というのを変えたかった」と優勝の味をかみしめた。

 次の目標はもちろん春夏連覇。「追い掛けられる立場になるけど、夏も優勝したい」。頼もしいエースの視線は夏に向けられていた。(水口 隆博)

 ◆村上 頌樹(むらかみ・しょうき)1998年(平10)6月25日、兵庫県南あわじ市生まれの17歳。小1から野球を始める。南淡中時代はヤングリーグのアイランドホークスでプレー。智弁学園では1年夏からベンチ入り。2年夏から背番号1。好きな言葉は「信頼」。家族は両親、兄、姉、弟。1メートル74、78キロ。右投げ左打ち。

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2016年4月1日のニュース