「長靴を買いなさい」「上に立つより役に立て」…心に残る鍛治舎語録

[ 2016年4月1日 10:04 ]

秀岳館・鍛治舎巧監督

 64歳にして高校野球指導者に転身し、甲子園初采配で秀岳館野球部創部初となる甲子園2勝目を刻んだだけでなく春4強。鍛治舎巧監督の指導力は見事。チルドレンの猛打だけなく、オールドルーキーの“絶口調”も印象に残った。

 秀岳館(熊本)が優勝した際に披露する予定だったが…ナインが「一言、一言が心に染みる」という「鍛治舎語録」。どうしても、紹介したい。

 「3年で日本一を目指す。長靴を買いなさい」。14年4月に秀岳館に就任した際の第一声。「雨でも外で練習する、休みはなしだ」と付け加えたが、毎週水曜日に完全休養日を設けるなど、計画的に選手を鍛えてきた。

 「黄色は足が速く見えるから」。14年4月の監督就任と同時にアンダーソックスの色を以前までのグレーからイエローに変更。パナソニック勤務時にグローバルブランド担当をやっていたため、選手、関係者に対しても説得力あり。
 
「頑張って成果が出れば自信になる。頑張らず、成果が出ないと悔いが残る。頑張って成果が出なくても失敗が残る。失敗は若者の特権だが、このチームは失敗は少ない」。秋の九州王者としてセンバツの出場が決まり、春まで残りの期間の目標、スキルアップ、スケールアップ、センスアップの「3S」を掲げる際の一言。

 「そこまでやるか、そこそこやるか。入り口でいいことを言っても出口が大事」。春初戦までの練習量を問われた際の一言。

 「試合をすればするほど丸裸にされるのが高校野球。目の前ではなく、先のことを見据えた監督は必ず、そこで負ける。甲子園は甘くない」。NHKの高校野球解説者として「2、3000試合は見た」という自負からの言葉。甲子園練習では自慢の打撃を一切見せず、守備練習のみ披露。

 「自主、自立、自治。台形なのか逆三角形なのか、早く対応しなさい」。甲子園での主審のストライクゾーンを初打席に立った際に自らどの形かを考えて、実践しなさいと指示。

 「感情は、押し殺さなくていい。コントロールしろ。成功するまで辞めないこと」。投手陣へのアドバイスを問われ一言。

 「うちのチームにカラーはない。カラフルに。無理しても無茶はさせない」。先発完投型投手は作らず、左右5枚看板で春登場。「野球人生はまだ長い。故障させたらかわいそう」との理由もあり。

 「日常生活でミスが出ると野球でもミスが出る。素直さを失ったら成長は止まる。上に立つより役に立て」。野球部のモットー「6S」を掲げた。頭文字がすべて「S」の整理、整頓、清潔、しつけ、清掃、スマイル。

 「最短より最速。腕ではなく軸回転で振れ」。1回戦・花咲徳栄(埼玉)戦でプロ注目左腕・高橋昂也対策でのナインへのバットスイングの指示。

 「猛打のあとに貧打あり。春はノリ、夏は実力。ただ、ノリはいいです」。2回戦・南陽工(山口)に16-0で快勝後のイケイケの一言。

 「素晴らしいゲームに感動しています。よく打ってくれた。大したもん。データ以上に、もう気力です」。準々決勝・木更津総合(千葉)戦での9回2死からの同点劇、そして劇的サヨナラ勝ちを収めた「鍛治舎チルドレン」をたたえる試合終了後の第一声。目は真っ赤で、声はうわずっていた。

 「気負いも高ぶりもない。阿蘇山よりも燃えたぎる情熱を胸に力を出せば結果は出ます」。4強入りを決めた翌日の練習前の一言。泰然自若の構えの中にも熱い胸の内をちらつかせる。

 「甲子園で勝ちたい人は熊本を出る、甲子園に出たい人は熊本に残る」。今年4月には新1年生28人が入部予定で、うち3分の1は熊本出身者というが、熊本県の高校野球の現状を聞かれ、ぴしゃりと一言。

 「バント練習もしとかなきゃなあ」。準決勝・高松商(香川)戦に延長11回で2-4で敗退。9回の犠打失敗を悔やみ一言。練習の大半がバッティング練習のみで、16年に入って、ほぼバント練習はしなかっただけに、ポツリ。

 「がっぷり四つで負けたら仕方ない。夏に向けてのスタートだ」。準決勝・高松商(香川)戦に延長11回で敗退。気落ちするナインに「何て声をかけてあげるんですか?」と問われ、一言。
 
 当然、夏に「聖地再登場」を狙う鍛治舎監督率いる秀岳館。聞けばなぜか心地良く、頭に残る「語録」を地方大会のときから聞き逃すつもりは、ない。

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2016年4月1日のニュース