愛情おにぎりで支えた釜石マネジャー いとこは日本ハム・大谷の元女房

[ 2016年3月26日 06:00 ]

<釜石・滋賀学園>釜石ナインはグラウンドに一礼し甲子園球場を後にする

第88回選抜高校野球大会第6日・2回戦 釜石1―9滋賀学園

(3月25日 甲子園)
 釜石ナインは試合後、三塁側アルプス席へのあいさつを終えると、一塁側やバックネット裏の席にも頭を下げた。釜石野球部ただ一人のマネジャー・藤井慧子さん(3年)は「またここに戻ってきたいなあ」と願いながらスタンドを見つめた。

 試合中はベンチで黙々とスコアブックにペンを走らせた。「声援がすごい。ほかの球場とは全然違う」。初めて入った甲子園のベンチで独特の雰囲気を感じながら「楽しかったです!」と即答した。

 いとこの日大野球部・佐々木隆貴さんの影響で高校野球のマネジャーに憧れた。佐々木さんは花巻東で大谷翔平投手(現日本ハム)とバッテリーを組んでいた捕手。釜石のセンバツ出場が決まると、佐々木さんから無料通信アプリ「LINE」で「おめでとう!」と祝福メッセージが届いた。

 入学直後は家族に反対され、バドミントン部のマネジャーになった。それでも諦めきれず「一番近くで選手を応援したい」と家族の説得を続け、1年秋に念願の野球部に入った。普段は学校の調理室で米25合を炊き、選手のために特大おにぎりを作る。麺つゆと天かす、ハムマヨなど味の種類は豊富で「忙しい方が楽しいです」と笑顔で話す。

 5年前、釜石市立甲子小6年時に東日本大震災で被災。卒業式の練習中に大きな揺れに襲われ、校庭に避難した。「照明が大きく揺れて音が凄くて怖かった」。そのときの恐怖は鮮明に覚えている。「まだ復興は全然進んでいない。甲子園をきっかけに、町が盛り上がってほしい」と願う。

 滋賀学園に敗れ、2回戦敗退となった。「エースが打たれたので悔やしさはないです。全体的なレベルアップが必要」。釜石に戻ったらまた愛情たっぷりのおにぎりを握るつもりだ。(青木 貴紀)

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2016年3月26日のニュース