さらば青春の味 雄星がもう一度食べたい超特大ソフトクリーム

[ 2016年3月24日 09:59 ]

2009年10月、花巻東高に登校する・菊池

 「知らなかった…。かなりショックですね。子供の頃から通ってましたから」。西武・菊池は寂しそうに言った。プロ7年目で自身初の開幕投手に指名され、25日のオリックス戦(西武プリンスドーム)に先発する左腕。現在、94キロ。「昔から球数は多い方と自覚しているので、それに負けない体をつくってきたつもり」。その胃袋を支えてきたのが、地元・岩手県花巻市にあるマルカン百貨店6階の展望大食堂だ。建物の老朽化で、6月7日に閉店することが決まった。

 「高校(花巻東)の練習休みの時もみんなで食べに行ったし、甲子園出場が決まった時の祝勝会もそこでやりました」

 琥珀(こはく)色の照明が“昭和モダン”ともいうべきレトロな雰囲気を醸し出し、全面ガラス張りで花巻市内を一望できる名物食堂。ナポリタンにカツを載せた「ナポリカツ」、辛みそ味の「マルカンラーメン」などが看板メニューだ。なかでも菊池は10段巻きで高さ約25センチの超特大ソフトクリーム(180円)がお気に入りで、「口で直接食べたら崩れるから、テーブルに置いたまま箸で食べるんです。本当にでかいですよ」と“花巻流”の食し方に胸を張る。プロ入り後は足を運ぶ機会がなかったというが、菊池にとっては故郷を象徴する味だったのだ。

 全国的にも老舗デパートの閉店は時代の流れともいえるが、この大食堂だけは現在も大人気で、約400の席数にかかわらず、休日には席待ちの客であふれる。わざわざ遠方から訪れる観光客も後を絶たないという。中心市街地の空洞化など地域経済の影響も懸念される中、運営引き継ぎに名乗りを上げる企業も現れている。「もう一度、食べたいですね」。菊池の切なる願いはかなうだろうか。(東山 貴実)

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2016年3月24日のニュース