札幌第一　意地の９回反攻２点「夏絶対にもう１度」

＜札幌第一・木更津総合＞甲子園の砂を拾う長門（左）ら札幌第一ナイン

第８８回選抜高校野球大会１回戦 札幌第一２―５木更津総合

（3月22日 甲子園）
　札幌第一に“試練の春”だ。初出場の札幌第一は、第３試合で昨秋の関東大会の覇者・木更津総合（千葉）と対戦して２―５で完敗。道勢９校目となるセンバツ初出場初勝利はならなかった。エース兼主将の上出拓真（３年）は６回８安打を許して３失点降板。初めて　の甲子園のマウンドで味わった屈辱を胸に、仲間とともに、夏へ向けて新たな歩みを始める。

　夕暮れの甲子園。木更津総合の校歌が流れる中で、上出はじっとスコアボードを見つめた。６回８安打３失点。エースとして最後までマウンドを守ることができず、悔しさが湧き上がった。

　「悔しいです」。上出がひと言でそう表現したのは１球だ。０―１の６回２死二、三塁。９番の投手・早川隆久（３年）に３球粘られたフルカウントから膝元のスライダーを中前に運ばれた。痛恨の２点適時打。７回から右翼へ回り、２番手の冨樫も失点して９回の追い上げも及ばなかった。

　痛恨の１球。ただ、決して甘い球ではなかった。膝元から落ちる際どいコースで、打った打者を褒めるべき球だ。それでも上出は言った。「あれだけ粘られていたのであれば、満塁にしてもよかった。投手相手に打たれたくないと思ってしまった」。エースとして勝利に導けなかった。最後まで投げきれなかった。結果にこだわってきたからこその言葉だった。

　３月上旬の宮崎合宿へ出発前。８４～９４年に札幌第一を率い、現在は病に伏している宮崎一夫元監督（８３）を見舞った。上出が幼い頃からお世話になり、野球を始めたきっかけとなった恩師だ。「エースはチームの中心でいろ」。その言葉は今も胸にある。大会前には、全選手へ菊池雄人監督（４３）が「宮崎先生は今、戦っている。自分たちも戦わないといけない」と声を掛けた。だから、勝ちたかった。

　０―５で迎えた９回２死一、二塁。１番・辻陸人（３年）が２点三塁打を放った。好投手・早川から意地でもぎ取った２点。「（宮崎）先生もきっと見てくれていたと思う」。辻は言った。

　試合後、ナインは甲子園の砂をスパイクシューズにかき集めた。札幌に帰り、宮崎元監督へ届けるためだ。「主将として自分がもっと粘り強くならないといけない。夏は絶対にもう一度戻ってくる」。上出は真っすぐ前を向いた。悔しさは忘れない。春から夏へ。札幌第一の新たなスタートが甲子園で切られた。（清藤　駿太）