サヨナラスクイズで明石商劇的甲子園初勝利 大声援から勇気

[ 2016年3月23日 05:30 ]

<明石商・日南学園>9回一死満塁、藤井は投前にサヨナラとなるスクイズを決める

第88回選抜高校野球大会1回戦 明石商3―2日南学園

(3月22日 甲子園)
 悲願の甲子園初星や! 1回戦3試合があり、春夏通じて初出場の明石商(兵庫)が、12年ぶり5回目出場の日南学園(宮崎)に3―2でサヨナラ勝ち。吉高壮(3年)が9回2失点10奪三振の好投で、藤井聖也(3年)のサヨナラスクイズを呼び込んだ。8強をかけた2回戦は過去4度優勝の名門、東邦(愛知)と激突する。

 狙い澄ましたサヨナラスクイズが決まった。明石商が劇的な甲子園初勝利。力投の吉高も歓喜の雄叫びを上げていた。

 「最初は正直、緊張してしまった。いつも通りのフォームで投げられなかった。3回から真っ直ぐもスプリットも低めにいって、修正できた」

 被安打6、2失点、131球の完投。奪三振も10個を数えた。スプリットが膝元から鋭く落ち、バットは何度も空を切った。最速も143キロを計測した。

 歓喜までには苦難もあった。2回1死、日南学園の浜本に先制ソロを被弾。高めに浮いたスライダーだった。「深いレフトフライだと思ったけど浜風で伸びた。甲子園の怖さも感じた」。これで我に返った。雰囲気にのまれて右足に体重が乗っていなかったことに気づいたのだ。いつも捕手や監督から指摘されるポイント。意識してゆっくり投げると、しっかりと体重がのり、本来の低めへの制球もよみがえった。

 2回2死一塁から最初の三振を奪うと、3回からエンジン全開。「三振をとったときの歓声が気持ちよかった」と楽しむ余裕もできた。

 それでも、簡単には白星を手にできない。8回、味方が勝ち越して勝利目前の9回の守備。1死から三塁打と死球で一、三塁とされ、右前適時打を浴びて同点。なおも一、二塁と逆転の危機にさらされ、顔が青ざめた。

 「勝ち急いでしまった。アルプス席を見て、ここで踏ん張らないといけない、と気持ちを切り替えました」

 大声援に勇気をもらってギアを入れ直した右腕は、次打者の萩原を空振り三振、続く芳賀を中飛に仕留めた。いずれも自信のあるスプリットで料理し、その裏のサヨナラ劇につなげた。

 昨夏の兵庫大会2回戦の洲本戦で9回に4点を挙げてサヨナラ勝ちしてから、ナインの心に「逆転の明商」という信念が芽生えた。“本家”の報徳学園から脈々と続く県勢のお家芸。「次は最初から、いい投球を」と意気込む右腕の快投が、8強への原動力になる。(水口 隆博)

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2016年3月23日のニュース