【甲子園百景・春】全力プレー見て“原点”思い出そう

[ 2016年3月21日 08:30 ]

<福井工大福井・智弁学園>2回2死二塁、岡沢の打球を福井工大福井・浅里が好捕

第88回選抜高校野球大会1回戦 福井工大福井0―4智弁学園

(3月20日 甲子園)
 スコアボードの大時計の針が9時を指す。トランペットの音を合図に右翼ゲートから、桜前線とともに春を告げる少年たちが歩を進める。高校野球は昨年、節目の100年を迎え、新たな100年に向かってスタートを切った。

 32校、開星の2選手が体調不良で欠席したが、573人が母のような甲子園の土を踏みしめる。釜石が来る。18人の背番号を見ながら「頑張れよ」と思わず心でつぶやく。長田も初出場のうれしさが行進に表れる。その後ろを小豆島。スタンドの拍手がまた大きくなる。夏は3列で歩く行進も春は2列。主将が先頭に立つから、他の学校は最後尾も1人になる。しかし18番のいない小豆島だけはきっちり2列の行進。島民の悲願。開会式後、八田英二高野連会長に「21世紀3校、いい行進でしたね」と声を掛けると、うれしそうにうなずいた。

 すぐに1回戦が始まる。勝ち負けはあっても、すべてが全力プレー。福井工大福井・浅里のファインプレー、鹿児島実の下手投げ谷村の好救援、そして滋賀学園の強打。今、プロ野球は元スーパースターが覚せい剤使用、現役の選手が野球賭博、円陣のご祝儀問題。もう一度、この高校野球を見て原点を思い出そうじゃないか。白球をただただ追いかけた頃を。5年前、東日本大震災のときに楽天・嶋基宏選手が言った「見せましょう 野球の底力を」の言葉、高校球児が見せている。(落合紳哉特別編集委員)

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2016年3月21日のニュース