釜石 日本一の行進で「他を圧倒する」!リーダーは元応援団長

[ 2016年3月20日 05:30 ]

通路を行進する釜石・菊池主将

 第88回選抜高校野球大会は、20日に甲子園球場で開幕する。19日は開会式のリハーサルがあり、前日からの雨の影響でグラウンドが使えず2014年以来、2年ぶりにバックネット裏で主将のみが入場行進の練習などを行った。21日の第1試合で小豆島(香川)と21世紀枠対決に臨む釜石(岩手)は、兵庫県西宮市内のグラウンドで調整。練習の最初に選手全員で行進し、菊池智哉主将(3年)は開会式で日本一の行進を目指すと宣言した。

 「日本一」への準備は整った。釜石ナインは練習の最初に2列に並び、中村翔斗内野手(3年)の「イッチニッ!」の掛け声に合わせて外野を力強く行進した。雨の影響で開会式リハーサルはグラウンドが使用できず、選手全員での行進は本番までお預けとなったが、菊池智主将は「行進はずっとやってきたのでみんなが誇りを持っている。日本一の行進を目指したい」と言い切った。

 昨夏の新チーム結成後からセンバツ開会式を想定し、日々の練習の最初と最後の行進を日課としてきた。最初は掛け声なしだったが、冬から足並みをそろえるために中村が声を出すようにした。足を前に上げすぎないなど「自然な行進」にこだわる。菊池智は「行進でも他を圧倒しようと自覚してきた」と胸を張る。

 行進のリーダーとなる中村は、中学時代は応援団長。試合前の円陣で「俺たちはできる!」と号令をかけ、試合中は一塁コーチャーとして声を張り上げる。行進では遠くまで響くように声を高くしており「毎日やってきたことなので緊張することはない。自分が引っ張りたい」と意気込む。

 東日本大震災で甚大な被害を受けた釜石ナインが聖地で堂々と行進する姿は、きっと被災地の励みになる。小学6年時に被災した中村は震災後の数日間、母・ひろみさん(50)の安否が確認できず不安な日々を過ごした。過去にも津波など地震による被害を受けた地域で、母からは「生きていれば必ず会える」と言われていた。その言葉を信じてラジオの安否情報を聞き続け、再会を果たしたときは涙を流して抱き合った。

 苦難を乗り越えてつかんだセンバツ切符。佐々木偉彦監督はこの日、小豆島の杉吉勇輝監督と対談し「震災は人生を覆すぐらいの大きなこと。思いはそれぞれある。でも野球をやることとは関係ない」と言った。夢だった甲子園を満喫し、躍動する。杉吉監督が「エンジョイベースボール」のモットーを掲げるのに対して、佐々木監督は「知人に“小豆島高校さんよりもエンジョイしてこい”と言われました。それを子供たちにも伝えたい」と話した。

 練習の最後。16日の甲子園練習では時間切れで歌えなかった校歌を響かせ、勝利のイメージを膨らませた。日本一の行進で弾みをつけ、「超エンジョイベースボール」で同校の聖地初白星をつかみ取る。 (青木 貴紀)

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