ウィルマン氏 革新的なデータ分析で注目 新たな“球界のスター”に

[ 2016年3月16日 11:10 ]

2012年以降、毎年3月に開催されているSABRの会議には「数字オタク」が集結
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 【メジャーのデータ革命(上)】キャンプ真っ盛りのアリゾナ州フェニックス。3月10日から12日まで市内のホテルに「数字オタク」が集まった。SABR(アメリカ野球学会)のアナリティクス・カンファレンス。訳せば「データ分析研究発表会」か。12年以降毎年3月に開催されている。

 広い会議場にマイク・トラウト(エンゼルス)やクレイトン・カーショー(ドジャース)の姿はないが、ここでもスターは生まれる。2日目の午後、MLBアドバンスメディアの「スタットキャスト」のパネルに、大リーグ公式サイトのマイク・ペトリエロ記者とともに登場したのが、新しい英雄ダレン・ウィルマン氏(34)だった。

 彼のデータは今、野球ジャーナリストの間でとても注目されている。「チャプマン(ヤンキース)が11年以降に投げた100マイル(約161キロ)超えの速球は計1241球。他の全ての投手の合計1187球を上回る」「95マイル(約153キロ)以上の球速は、15年は全体の9・14%だった。これは14年の6・87%から急増。08年にはわずか4・82%だった」などなど。

 もともと野球はデータが豊富なスポーツだが、08年の「PITCH f/x」(全投球の速度、動き方、球種、結果を測るシステム)、15年の「スタットキャスト」(守備、走塁含め、フィールド上の選手、ボールの動きを全て網羅するシステム)の導入で、総量は天文学的数字になろうとしている。この莫大な生のデータをどう処理し、分析すれば、勝利に結び付けられるのか。

 ウィルマン氏は、スタットキャストのデータを基に作成した、個々の選手の守備チャートをスライドで見せながら、何が分かるか説明した。

 「他の選手と重ねれば、守備範囲の比較ができる。ロレンゾ・ケーン(ロイヤルズ)は右中間が本当に広い。マイク・トラウトは守備範囲は広くないが、近くに飛んできたものは全て捕球する。ケビン・キーアマイヤー(レイズ)は守備範囲が広すぎて、立つ位置を考えないと、球場によっては壁に当たりレンジの広さを生かしきれない」

 70年代に統計学的見地から野球を分析するセイバーメトリクスを広めたビル・ジェームズ氏同様、ウィルマン氏も元は球界の人間ではなかった。大学でコンピューターサイエンスを専攻、エンジニアとなり、ヒューストンの検事局事務所で5000人の警察官のためのソフトウエアを作った。13年、大学までプレーした野球への愛情からデータサイト「ベースボールサバント」を立ち上げた。

 他にないデータをビジュアルで工夫して見せたことで14年にアクセス数が急増。球団関係者も次々に連絡を取りにきた。そして3カ月ほど前、MLBアドバンスメディアのリサーチ、開発部門のディレクターに引き抜かれたのだった。(奥田秀樹通信員)

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