松井氏 1軍野手に打撃理論伝授「素晴らしいバッターに共通」実演

[ 2016年2月3日 05:30 ]

松井臨時コーチ(中央)はフリー打撃前に選手たちに打撃指導を行う

 「ゴジラの青空打撃教室」が開催された。巨人の宮崎春季キャンプで臨時コーチを務める松井秀喜氏(41)が2日、フリー打撃前のグラウンド上で、野手陣に対して身ぶり手ぶりを交えて打撃理論を説いた。ヤンキースで同僚だったデレク・ジーター氏やアレックス・ロドリゲスら、メジャーのスターを手本として挙げ、軸足に体重に残すことなどをアドバイス。至上命令である打撃向上へ、日米通算507本塁打の「ゴジラ理論」を注入した。

 フリー打撃前のサンマリン宮崎。別メニューで調整している特別班の阿部らを除く1軍野手全員が一塁ベンチ前に円陣を組むと、松井臨時コーチがバットを手にした。最初は右打ち、途中から本来の左打ちに変え、実演を交えながら約13分間、指導を施した。

 「素晴らしいバッターに共通していた点などをお伝えしました。チームメートだけじゃなく、対戦相手でもね」

 例に挙げたのはヤンキース時代に同僚だったジーター氏、ポサダ氏、Aロッド、さらにはヤ軍の宿敵レッドソックスの主砲だったラミレス氏。目の前で見てきた強打者たちだ。レジェンドがレジェンドの打撃を教材にする。松井氏にしかできない授業だった。

 松井氏は詳細は明かさなかったが、選手によると、ポイントはタイミングの取り方と体の「割れ方」だ。「割れ」とは、グリップがトップの位置に入った状態のことで、この「割れ」をつくると、ボールとの距離感が取れ、いわゆる「タメ」ができる。そのためには重心を落とし、軸足に8~9割体重を残すという。

 松井氏も巨人時代に師事し、円陣で補足説明をした内田打撃コーチは「1、2、3の“2”を長くして下半身を使い、軸回転で打てばもっといいパフォーマンスができるということ」とした。球を呼び込んで、軸回転で捉える。松井氏自身がメジャーの動く球に苦しみながら体得した打撃だ。

 当初、この「特別授業」は宮崎キャンプ終盤の13日に総括的に宿舎で行う予定だった。しかし、キャンプ初日に内田コーチ、村田ヘッドコーチと意見交換する中で、松井氏が「選手全体を見て、“もう少しこうした方がいいんじゃないかな”と共通する部分がありました」と指摘。そこで2人から「選手に話してほしい」と依頼された。最終的には高橋監督が要請。キャンプの練習に一日でも早く生かすべく、第1弾が行われた。

 ナインも熱心に聞き入った。三塁の定位置死守に燃える村田は「(体重移動の際に)投手に近づくな、と言われたので強いイメージを持ってやった」と早速フリー打撃で実行。昨季ヤ軍でプレーしたメジャー通算122本塁打のギャレットも通訳の言葉にうなずき、真剣に耳を傾けた。

 松井氏は「全てが当てはまるわけじゃないよ」と前置きした上で語りかけた。2日目も、まずは首脳陣と対話し「見る」ことに大半の時間を費やした。個性を尊重しながら、超一流の金言を授ける。それがゴジラ流だ。 (大林 幹雄)

 ▼高橋監督 全員に合うかどうかは別問題。でも、日本でも米国でも成功した松井さんの考えだったり、凄い打者を見てきて、そういう印象を伝えてもらうことでヒントになることもある。

 ▼坂本 凄く参考になりました。メジャーリーガーの名前を挙げていただいて、自分の感覚とは違ったので、良いバッターはそういう感覚だったのか…と思った。

 ▼片岡 凄い経験をして結果を出してきた方。伝えてくれた言葉を大事にしたい。

 ▼大田 後ろに体重を残すという話でした。ためになりました。

 ▼中井 軸足に体重を置いた方がパワーのロスが少ないと聞いた。

 ▼岡本 軸を残してと、昨年から内田打撃コーチに言われてきたこと。そうだなと、あらためて思いました。

 ▼クルーズ 成功した方の話なので、参考になる。好打者には共通するところがあるんだと感じた。

 ≪松井氏が手本に挙げた選手≫

 ☆ジーター ヤンキース一筋で20年間プレーしたニューヨークの貴公子。主将として5度のワールドシリーズ制覇。通算3465安打の遊撃手。

 ☆A・ロドリゲス 歴代4位の通算687本塁打誇るスラッガー。薬物規定違反で14年は全休も、昨季は33本塁打と復活。愛称「Aロッド」。

 ☆ポサダ ジーターとヤ軍黄金期支えた両打ちの強打の捕手。通算275本塁打でDHとしても起用され勝負強さを発揮。

 ☆ラミレス 通算555発、打率・312の天才打者。00年代のレッドソックスの主砲としてヤ軍と数々の名勝負。

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