年俸90万円でスタート NPB正審判員への過酷な道のり

[ 2016年1月22日 09:20 ]

「NPBアンパイア・スクール」修了者で初の正審判となった青木昴氏

 キャンプインはもう目前。新人、若手選手にとっては厳しい競争の場となるが、それは審判員も同じだ。12月に関東、関西で開催された「NPBアンパイア・スクール」には約80人が受講。5泊6日の泊まり込みで行われ、午前9時~午後4時までが実技、午後7~9時半までが座学と息つく暇もない。受講料は自費で宿泊費、食費込みで8万3000円と決して安くはない。そして成績優秀者6人が今春の宮崎キャンプに派遣されることになった。沖縄でなく宮崎なのは、寒くても降雨の日が少ないからだ。

 この「最終テスト」に合格すれば、研修審判員として採用され、独立リーグに派遣される。しかし、それも2~4人。「アンパイア・スクール」の受講者から40倍近い関門をくぐり抜けなければならない狭き門だ。晴れて研修審判員となっても、生活は厳しい。年収はわずか90万円。正確に言えば、約半年のシーズン中の報酬ではあるが、月額にすれば7万5000円。このため、NPBはアルバイトを認可している。

 正審判員への道はさらに厳しい。研修審判員で実績を積めば、NPBの2軍戦に出場できる育成審判員へ。そこでようやく正審判員への道筋が開ける。井野修NPB審判技術委員長は「(ものになるかどうか)育成から3年を見てる。正審判員に上がっても、1軍の塁審になれるのに3~5年、球審となると早くて8年というところでしょうか」。まさに「桃栗三年柿八年」。正審判員になっても最低年俸は340万円しか保証されない。

 審判がいなければプレーボールが掛からないにかかわらず、選手に比べれば待遇面は格段に劣る。好きでなければできない職業。その分、志は高い。「NPBアンパイア・スクール」の第1期生で、今年1月1日付でスクール修了者で初の正審判となった青木昴氏(22)は「利き手が左なので、アウトのコールを右手でやらなければならないのが最初は大変だった」と振り返る。その上で「普段の私生活から自分を律して、これからの受講生の見本となるような審判になりたい。目標は利き手が同じ左の木内九二生(くにお)審判員です」と希望に燃えている。(東山 貴実)

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2016年1月22日のニュース