大リーグのユニーク出来高契約 投手なのに打撃、理想体重…さらに

[ 2016年1月10日 08:45 ]

レッドソックス時代のカート・シリング氏

 前田健太とドジャースが交わした契約内容は、正式発表前からさまざまな憶測を呼んだ。結論は、自ら入団会見の冒頭で明かしたように「身体検査でイレギュラーな点があった」こと。今後、起こり得る肘の故障に備えて、球団側がリスクヘッジした形。基本年俸は300万ドル(約3億5100万円)に抑えられる代わりに、先発試合数と投球回数に応じた出来高が毎年最大1015万ドル(約11億8800万円)も設けられた。

 巨額の出来高が前例のないケースとして注目を集めたが、大リーグには多くのユニークな出来高契約が存在している。

 このオフ、ファンの笑いを誘ったのがメッツと年俸725万ドル(約8億4800万円)で再契約した現役最年長となる42歳の右腕コローン。オールスター出場、サイ・ヤング賞、ゴールドグラブ賞などでそれぞれ5万ドル(約590万円)の出来高ボーナスを手にできるのだが、そこに守備位置別の最優秀打撃賞にあたるシルバースラッガー賞も付け加えられたのだ。

 ちなみに、コローンのメジャー18年間の通算打撃成績は216打数20安打の打率・093。本塁打はなく9打点。昨季は58打数8安打で二塁打を1本放ち、打率・138、4打点だった。ナ・リーグ投手の同賞は、強打で知られる左腕バムガーナー(ジャイアンツ)が2年連続受賞中の大本命。ファンは1メートル80、107キロのコミカルな体型の大ベテランのフルスイングと初アーチを期待している。

 同様の出来高は過去にもあった。11年にフィリーズと契約した救援左腕J・C・ロメロも、シルバースラッガー賞で5万ドルの出来高を付帯。左殺しのワンポイントが主な役割で、もちろんこの年は0打席。メジャー14年間通算で680試合に登板したが、打席数はわずか4で引退した。救援投手が、先発投手に与えられる最高の栄誉であるオールスター戦先発の出来高を設定することも。11年には指名打者中心の起用だった大砲アダム・ダンがホワイトソックスとの4年契約の中に、ゴールドグラブ賞受賞で2万5000ドル(約290万円)の出来高契約を含めた。

 太りやすい体質だった通算216勝右腕カート・シリングは、07年オフにレッドソックスと「体重出来高」を設定し再契約。シーズン中に6度の抜き打ち体重測定で、理想体重107キロをキープしていれば、最大200万ドル(約2億3400万円)を手にすることに。以降、肥満体質の選手には同様のモデルケースが流行するきっかけになった。

 ユニークだったのはアスレチックスの元名物オーナー、チャーリー・O・フィンリー。当時球界では不文律とされていた口ひげの出来高を全選手に設定。72年に父の日まで口ひげを生やし続けたら300ドル(当時約9万円)を約束し、珍しかったひげ軍団をチームの宣伝に用いた。

 「出来高」といっても、形や種類は千差万別。前田健のケースも、身体検査で不安が見つかった若手選手や日本選手と、長期契約を結ぶ際のモデルケースとなっていくかもしれない。代理人を含めた選手サイドも、球団サイドも知恵を絞り、これからも新たな契約の形が生まれていくだろう。(記者コラム 後藤 茂樹)

続きを表示

この記事のフォト

2016年1月10日のニュース