昨季最終戦の涙をうれし涙に 大瀬良16年は「チームの柱」決意

[ 2016年1月5日 08:08 ]

東京・銀座の広島ブランドショップ「TAU」でトークショーを行った広島・大瀬良

 広島・大瀬良は試合中にも関わらず、ベンチで号泣した。あふれる涙を抑えきれなかった。昨年10月7日、中日とのレギュラーシーズン最終戦(マツダ)。そのシーンは、テレビ中継でも何度も映し出された。「でも…」。右腕は振り返る。

 「一生懸命やった結果。恥ずかしいことじゃない。あれが僕の野球人としての姿」。悔しい。純粋で素直な、裏表のない性格そのままに、正直な思いをさらけ出した。「賛否両論あると思うけど、間違っていない」。野球人としての自身の生き様に、迷いはなかった。

 先発・前田健が7回6安打無失点。0―0の8回、大瀬良はマウンドに上がった。しかし1アウトを取っただけで3失点で降板。そのまま試合に敗れ、チームのCS進出が消滅した。ベンチで号泣。その時、そっと肩に手をかけて慰めてくれたのが前田健だった。絶対的な存在。もう、今季はチームにいない。「自分の立場も変わる。僕がしっかり引っ張っていかないと」。新年。大瀬良は意を新たにしている。

 昨シーズン後には、田村恵スカウトと食事をともにする機会があった。忘れられない。13年10月24日のドラフト会議。3球団の1位指名が競合する中、当たりくじを引いてくれたのが担当の田村スカウトだった。くじ引きは本来なら監督らの役割。スカウトが参加するのは極めて異例だった。「絶対に当たると信じていた」と目を潤ませた田村スカウト。食事の席で大瀬良は「(15年の)お前の成績は不甲斐ない」と激励されたという。

 涙、そして笑顔。昨年12月14日に東京・銀座の広島ブランドショップ「TAU」で開催されたトークショーでは、集まった大勢のファンに満面の笑みを振りまいた。白いセーターという飾らない私服姿で、寮生活やこのオフの引っ越しの話。理想の女性の話題では「年齢は関係ないですね。僕が抜けてるんで、そこを優しくカバーしてくれる人がいい」と話して、カープ女子から黄色い声援を浴びた。大瀬良の人柄そのままに、温かい雰囲気に包まれた多幸感あふれるイベントだった。

 「あれほど悔しい思いをしたことがない」というシーズン最終戦。その時に流した涙を糧に、今季はうれし涙に変える。16年の目標は「チームの柱」になること。プロ3年目。自分が何をしなければいけないかは、十分に分かっている。「困った時に頼ってもらえる投手。マエケンさんのように」――。(記者コラム・鈴木 勝巳)

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