釜石のエース岩間 震災で亡くなった母に「甲子園で投げる姿を」

[ 2015年12月12日 05:30 ]

21世紀枠の候補に選ばれ釜石のエース岩間

 日本高野連は11日、第88回選抜高校野球大会(来年3月20日から12日間、甲子園)の21世紀枠候補校9校を発表し、東北からは今秋岩手県大会で準優勝し、東北大会に出場した釜石が選ばれた。選出されれば、東日本大震災後に同県から初の21世紀枠での甲子園出場となる。出場3校は一般選考の29校(神宮大会枠を含む)とともに来年1月29日の選考委員会で決まる。9校から東(東海、北信越以東)と西(近畿以西)で1校ずつを、残り7校から地域を限定せずに最後の1校が選ばれる。

 東北地区での推薦が決まると、釜石ナインは静かに胸をなで下ろした。菊池智主将は「甲子園出場という夢がかなう可能性が出てきた。(震災後は)自分は野球が続けられるか分からなかったけど地元の人に支えてもらった」と感謝した。

 部員は24人。ごく普通の公立校が、今秋県大会で快進撃を見せた。決勝では盛岡大付に敗れたが3―6と善戦。08年に釜石南と釜石北が統合し現校名となってから初の東北大会出場を決めた。初戦で東北(宮城)に延長12回で2―3とサヨナラ負けしたが、甲子園常連校と互角に戦った。来春センバツ出場となれば釜石南時代の96年春以来20年ぶりの快挙となる。

 躍進の原動力は1メートル71の小兵右腕・岩間だ。肩、肘を痛めながらエースとして県大会から1人で投げ抜いた。「肩は大丈夫。肘は中学時代からずっと痛みを抱えているが試合ではアドレナリンが出るので」と大黒柱としてチームをけん引した。大槌町出身で、4年前の震災では自宅が流され、母・成子さんが亡くなった。44歳の若さだった。部員の多くが被災し、今も仮設住宅で暮らす中、「(母は)一番応援してくれた。甲子園で投げる姿を見せたい」と思いを強くした。

 釜石市では19年にラグビーW杯が開催される。橋野鉄鉱山・高炉跡は今年7月に世界文化遺産に登録された。岩間は「今度は自分たちが町を活性化させたい」。就任1年目の佐々木偉彦(たけひこ)監督は「選ばれても、駄目でも謙虚に準備したい」と前を向いた。今年4月から、練習後に全員で校歌を大声で歌ってきた。一人はみんなのために、みんなは一人のために。釜石ナインが聖地へ向け、一歩前進した。 (川島 毅洋)

 ◆釜石市 岩手県南東部。青森県南部から宮城県牡鹿半島までの太平洋岸にわたる三陸復興国立公園の中心に位置。面積は441・43平方キロメートル、人口3万5876人(11月末現在)。近代製鉄業発祥の地。フランスのディーニュ・レ・バン市などが姉妹都市。

 ▽21世紀枠 2001年の第73回大会で初めて導入された。原則的に秋季都道府県大会のベスト16から候補校を選ぶ。困難な条件の克服など、戦力以外の特色を加味して地区ごとに1校が推薦され、第79回大会まで2校、第80回大会からは3校、第85回大会は4校が選出された。

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