問題点多い現ポスティング 上限金額やめて球団と本人で設定しては

[ 2015年12月11日 08:27 ]

広島がポスティングシステム申請手続きを行った前田健

 13年に改定された現ポスティングシステムでメジャー移籍したのは同オフの田中だけ。今季、ヤクルトのバーネットは大リーグ球団との契約合意には至らなかった。今回の広島の前田健には大きな注目が集まっている。

 田中が移籍の際には、譲渡金額の上限が2000万ドル(約24億4000万円)に設定されたことに、楽天が異議を唱えた。大リーグ側は、上限がない旧制度での入札よりも、金額が抑えられるから歓迎する声は多かった。ただ「これではFA交渉と同じ」と嘆く米幹部はいた。

 交渉期間中は契約が成立するか、契約がまとまらずに期限切れとなるまで、選手、代理人にMLB、NPB、日本の所属球団に交渉過程の報告義務はない。そこに疑問を持つ日本の球団はある。当該球団は1カ月もの間、どこと交渉しているかすら見えない。契約合意しなければ、譲渡金も支払われない。穴を埋めるための補強戦略も保留せざるを得ない状況も出てきてしまう。

 では、選手が所属球団に「今は○○と交渉しています」や「10球団と交渉しています」と善意で途中経過を報告した場合はどうか。ある代理人は「報告した場合の交渉上のデメリットが大きい」と話す。仮に、1球団しか譲渡金額を払う意思を示した球団がない場合、その米球団は「交渉しているのはウチしかない」と判明すれば、足元を見る。日本の球団が交渉過程を知った場合、今度は日米球団間で裏取引が生まれる可能性を秘める。不正防止と、選手の交渉を考えれば「秘密」にしておく必要がある。

 この制度は16年10月31日まで有効。改定や終了の意思がNPB、MLB機構にある場合は、180日前までに相手方に意思表示を行う。その意思がない場合は1年間、自動延長される。だが、日米双方の球界関係者は「改定は必要不可欠だ」と話す。改定に向けた準備は進むだろう。

 細かい争点は抜きにして、譲渡金額の上限は撤廃したらどうだろう。日本の球団と本人サイドで交渉した結果で、譲渡金額を設定すればいいのではと思う。仮に譲渡金額50億円で、選手の契約条件が悪くなったとしても、それでも大リーグに移籍したいと考える選手はいる。若い選手の流出にならないように「最低でも日本球団で5年以上プレーする」などの条件をつければいい。あまりに現実とかけ離れた高額な譲渡金設定をすれば、球団側は「人身売買」との非難を受ける。均衡は図れるのではと思う。

 譲渡金額設定などで、また日米間でもめるなら同制度は撤廃していい。完全FAの形で交渉する形が見ている方もスッキリする。(記者コラム=倉橋 憲史)

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2015年12月11日のニュース