「菅野基金」設立会見で見せた原前監督の存在感と心配り

[ 2015年12月5日 09:30 ]

「菅野基金」の設立会見で介助犬のクウとじゃれ合う菅野

 「こんにちは」。寒さも厳しくなってきた12月3日。都内にある巨人球団事務所の記者室だった。聞き覚えのある声が響いた。居合わせた報道陣が一斉に振り返ると、そこには原前監督の姿があった。「きょうは俺は(取材対象とは)違うから」。笑顔でそういうと目立たぬように、報道陣より後ろ、最後列の椅子に静かに腰掛けた。

 とはいってもさすがの存在感だ。一瞬にして記者席は緊張感に包まれた。そこに、この日の主役・菅野が登場した。社会貢献活動に向けた「菅野基金」の設立会見。介助犬育成普及のために支援金を贈呈。さらには生まれ育った神奈川県相模原市への寄付も行っていくという。巨人のエースに成長した右腕も一社会人として、慈善活動へ積極参加していく。

 会見を一通り終えると、一番後ろから「よくできました」と伯父でもある原前監督が拍手を送った。続いて行われた報道陣向けの写真撮影。笑顔を浮かべ、犬の背中をなでる菅野に「もう少し、ほおずりするとか。なんかあるだろう」と注文が出た。他でもない。これも原前監督の声だった。自然と笑みがこぼれた菅野が犬に顔を近づけると、無数のカメラのシャッターが切られた。

 「介助犬」。まだまだ世の中では聞き慣れない人の方が圧倒的多数だろう。車いすで生活する人の代わりに、携帯電話を持ってきたり、ドアの開け閉めなども行う。車いすでの生活を強いられている人には、心強いパートナーである。だが、菅野が「まだまだ世間での認知度は低い」というように、全国にも74頭しかいないという。

 少しでも認知度を高めるために、菅野は協力を決めた。そこへ自らも足を運ぶことで注目度を高めた原前監督。報道陣向けに写真の構図にも注文を出し、少しでも大きく扱われるようにと気を利かせた。現場から退いても、その行動やサービス精神はまだまだ健在だ。(川手 達矢)

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2015年12月5日のニュース