石井一久氏シリーズ分析 両軍トリプルスリー3番への配球で明暗

[ 2015年10月28日 10:30 ]

<ヤ・ソ>7回1死一塁、柳田を空振り三振に仕留めた左キラーの久古(左)

日本シリーズ第3戦 ヤクルト8-4ソフトバンク

(10月27日 神宮)
 短期決戦には必ず流れがある。ヤクルトにも、ソフトバンクにも、傾いたこの日の流れを決めたポイントとして、本紙評論家の石井一久氏(42)は、トリプルスリーを達成した2人の中心打者への両チームのバッテリーの配球に着目。ヤクルト、西武で計5度の日本一を経験している石井氏は、シリーズの「流れ」が変わる可能性のあるヤクルトの1勝と分析した。

 日本シリーズでは、マークする打者に対しての配球は、その試合だけに限るものではない。シリーズを通して抑えるために、どのような伏線を張るか。

 ◆7回1死一塁、ヤクルト4番手・久古の柳田に対する内角中心の配球 この試合の大きなヤマ場。柳田は最初の3打席は右腕の杉浦と対戦したが、全14球中、半分の7球が内角攻めだった。第4打席は、左のサイドスロー・久古に代わった。今シリーズ初対決。一発出れば逆転の場面で、ヤクルト・バッテリーは安全策を取るなら、外角に逃げていくスライダーが中心となる。ところが、ここでも内角に直球、シュートを投げてきた。

 柳田の頭には「このシリーズは左投手でも内角を攻めてくるんだ」とインプットされたに違いない。そしてフルカウントからの8球目は、内角を意識させてからの外角直球で空振り三振。この2人のマッチアップは今後も重要な局面である。三振ゲッツーでピンチを脱したが、この試合の勝利を決めただけでなく、今後にも意味のある1打席になったと思う。

 ソフトバンクの打者は柳田に限らず、全体的に積極的に打ってくる打者が多い。外角攻めでかわす配球も考えられるが、ヤクルトの捕手・中村は強気に内角をどんどん突いてきている。かわすよりも、ファウルを打たせたり、詰まらせる配球。内角を意識させておくことで、第4戦以降、外角が使いやすくなったといえる。

 ◆切り札を仕留めた5回の山田の逆転2ラン ソフトバンクの工藤監督は、相手に流れを渡さないために、4連勝で決めるような継投をしてきた。2死一塁で、千賀の投入。CSでの投球を見ても、勝負手だったはず。しかし、山田はそれを見事に仕留めた。千賀は、カウントを3ボール1ストライクとしたことで分が悪くなった。2ボール2ストライクにすれば、打者は150キロ超の速球とあの爆発的なフォークを両方想定して待たないといけないが、山田は打者有利なカウントで直球に思い切ったスイングができた。

 ソフトバンクのバッテリーはヤクルトとは対照的に、山田に対しては外角中心。内角が強いことを頭に入れながらの配球だったが、最初の2本は外角球を打たれ、3本目は内角も打たれた。山田対策はもう一度練り直す必要がある。また、千賀はレギュラーシーズンでの通算被本塁打は1本で、この2年間は打たれていなかった。精神的なダメージも懸念される。

 山田は1、2戦目はきれいなバッティングをしようとしている感じが見て取れた。それが本拠地に戻り、本来の強いスイング、ヘッドスピードの速さを取り戻した。

 ◆ソフトバンクには余計だった8回の3失点 同じ敗戦でも、切り替えやすい1敗と引きずる1敗がある。この日に関して言えば、後者だろう。それまでヤクルトの得点は全て本塁打で、ソフトバンクの守備の時間は常に短かった。それが8回は約20分も守ることになり、疲れも倍増したのではないか。3試合を終え、シーズンの成績に関係なく、使える投手と使えない投手を見定めることが大事。ヤクルトでいえば、真中監督は石山は使えると踏んだので、左打者が先頭から4人続く7回も続投させた。一方、ソフトバンクは千賀や、8回に3失点した五十嵐の状態をどう見るか。野手では、バレンティンが深刻だ。外す選択肢もあるが、僕はヤクルトが日本一になるには、バレンティンの力が必要だと思う。

 ▼ヤクルト・中村 中心打者にはある程度、内角を意識させることができたと思う。

 ▼ヤクルト・高津投手コーチ 柳田はいつもポイントで回ってくる。久古はポイントの投手だと思っていた。左殺しに関して、今の彼なら相手の上をいっていると思う。信頼して送り出せる。

続きを表示

この記事のフォト

2015年10月28日のニュース