ファン待望の復活果たしたDeNA・三上 願うは「地味な役割」?

[ 2015年9月6日 10:00 ]

DeNAの三上

 華やかな舞台より、縁の下の力持ちに喜びを感じる選手がいる。DeNA・三上は、取材に行く度に「えー、嫌です。記事にしないでいいですよ。適当に書いてください」と笑う。その真意は。「目立ちたくないんです。野球も地味な役割でしれっとやりたい。一年間1軍で投げてチームに貢献できればいい」と穏やかに語った。

 新人の昨季はチーム最多の65試合登板。上手と横手からの変則投球でくせ球を武器に5月上旬から守護神に抜てきされ、当時の新人球団記録となる21セーブを挙げた。すい星のごとく現れた若き守護神。メディアに取材される機会が増えたが、「慣れないです。盛り上がり方が凄かったので違和感があった」と戸惑っていた。

 注目されることに心地良さを感じない。三上は自身の性格を教育環境に起因していると分析する。「野球部は特にそうですけど、他の国に比べて日本は上下関係が厳しい。謙虚が良いとされる。良いか悪いかわからないが、僕はその影響を強く受けていると思う。チヤホヤされて消えた選手も見てきたし、目立たない方が良いなって自然に思うようになった」。

 ただ指導者の方針に盲目的に従ってきたわけではない。小学生の時に“ベース一周のボール回し100球”と指示された時は「何のためにこの回数をやるんですか?」と説明を求め、進学した県岐阜商でも練習の意図に納得できず途中で帰ったこともあった。「常に考えてやってきた。疑問があったら聞くのは当たり前です」と心の芯は強い。

 プロ2年目の今年は2月の春季キャンプで右肘痛を発症。数カ月経っても痛みが消えず、原因も分からなかった。「今まで故障したことがなかったし、すぐ治ると思ったので焦った。もう投げられないのかなとも考えた」と思い悩んだ。

 光が差したのは7月上旬。首から背中にかけての神経が圧迫されていることが右肘痛の原因と判明した。リハビリを乗り越え、8月8日に1軍昇格後は12試合連続無失点をマークするなど防御率0・64。7、8回にセットアッパーで腕を振り続ける姿は昨季より輝いているようにも見える。

 山崎康が自身の樹立した新人セーブ記録を塗り替えたがライバル心はない。「(山崎)康晃は凄いですよ。記録が抜かれても何とも思わない。仲間だし。僕は誰も見ていないところで投げます」。本人が否定するだろうが、「ピッチャー・三上」の名前がコールされるとスタンドから大歓声が上がる。表情を変えず淡々と投げ込む職人気質の右腕。その生き様は、ファンの心をがっちりつかんでいる。(平尾 類)

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2015年9月6日のニュース